登戸駅徒歩4分 日本全国&海外からもご依頼いただけます

遺産分割協議書の作成手続

目次

遺産分割協議書の作成で必要なこと

・遺産分割に関して相続人全員の合意を得ること

反対する相続人が一人でもいると、遺産分割協議は成立しません

・合意内容を証明するため、相続人全員の署名捺印を得ること

署名捺印しない相続人が一人でもいると遺産分割協議は成立しません
MEMO
遺産分割協議書には、自分の手で署名し、その横に実印を押します。
ワープロで氏名を印字しても、認印を押しても遺産分割協議書自体は有効ですが、相続手続に使用できません。
二度手間にならないよう、自著&実印とすべきです。

なお通常は、署名の上に住所も記載します。印鑑登録証明書の記載通りに書きます。印字でも構いませんが、自分の手で書くほうが確実です。

遺産分割協議の開催方法

相続人全員が実際に集まって協議する

基本はこの方法になります。遺産分割協議書を予め作成しておき、協議後に署名捺印まで完了するのが最もスムーズです。


ただし、協議の流れ次第では、作成した内容通りにまとまらないこともあります。

この場合、手書きで構わないので合意内容を書面にまとめ、相続人全員の署名捺印をもらっておく。後日、正式な遺産分割協議書を作成し、署名捺印を集めます。

相続人全員がオンラインで集まって協議する

遺産分割協議書では必ずしも物理的に一堂に会する必要はなく、オンラインで相続人が集まる方法でもかまいません。ZoomやSkype等のビデオ会議アプリを使います。

オフラインとオンラインのいずれにせよ、相続人全員の出席が必要なことに留意しましょう。代理は不可。

相続人の配偶者など相続人以外の人の出席はなるべく避けたほうがいいです。

個々に話し合った結果を協議にまとめる

実際には、相続人が遠方に住んでいたり、忙しいなどの理由でこの方法がとられることが多いです。

中心的な相続人が電話や直接の対面により各相続人と個別の協議を行い、全員の合意へとまとめあげます。

各相続人の意見の調整が必要。中心的な相続人の分割案に反対意見があると合意が困難になりがちです。

署名・捺印の集め方

遺産分割協議後にその場で集める

もっとも確実で安全な方法です。可能であれば、これに越したことはありません。

もしくは相続人全員が署名捺印のためだけに再度集まる機会を作ってもいいでしょう。

持ち回り方式で集める

レターパックなどを利用して郵送による持ち回りで、同じ遺産分割協議書に全員の署名捺印を押してもらいます。

相続人の数が多いと手間がかかります。

持ち回りの途中で止まってしまったり、紛失してしまったりなどの危険もあります。

遺産分割協議証明書を送って集める

同一内容の書類を同時に各相続人に送り、すべての相続人から署名捺印を得ることで、相続人善因の合意があったことを証明する方法です。

この場合、遺産分割協議書ではなく、遺産分割協議証明書と呼ぶことがあります。

相続人の人数が多かったり、海外在住など持ち回り方式では時間のかかる相続人がいるときは、この方式を検討してみてもいいでしょう。

遺産分割協議から外れる方法

遺産分割協議には相続人全員の出席が求められており、そこでの合意をまとめた遺産分割協議書にも相続人全員の署名捺印が必要です。

ただし例外的に、特定の相続人が遺産分割協議に参加しなくても協議を有効に成立させる方法があります。

相続放棄

相続放棄すると、その相続人は初めから相続人でなかったことになりますので、遺産分割協議に参加しなくても協議は有効に成立します。

相続放棄をするには、相続があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければいけません。

相続分がないことの証明 

故人から生前に多額の特別受益を受けていて、特別受益を考慮すると自分の相続分がゼロになる相続人は、相続分がないことの証明によって遺産分割協議から外れることができます。

この証明を相続分がないことの証明書という書面を作成し、署名をして実印を押し印鑑登録証明書を添付します。

こうしておけば、その相続人が遺産分割協議に参加しなくても、遺産分割協議は有効に成立し、遺産の名義変更が可能になります。

この方法が使われるのは、主にわざわざ家庭裁判所で相続放棄の手続をするのが面倒なときです。

しかし相続放棄と違って、マイナスの財産まで放棄するわけではないため、借金があれば引き継ぐことになる危険があることに注意してください。

またどんな相続でも利用できるというわけではなく、生前贈与や遺贈による特別受益がある場合でしか使えない限定的な方法であることも押さえておきましょう。

相続持分の譲渡

自分の相続人としての地位を他の相続人又は第三者に譲り渡すことによって、遺産分割協議から外れる方法もあります。

これを相続持分の譲渡といいます。

相続持分はタダで譲渡することもできるし、有償で譲渡することもできます。

譲り渡す側と譲り受ける側の双方が合意すれば、他の相続人の同意は不要です。

相続人の人数が多くて遺産分割協議がなかなかまとまらないとき、協議に関わる人数を減らすことで早期に協議をまとめることができるかもしれません。

このようなときに相続持分の譲渡を検討します。

相続持分の譲渡では、譲渡があった証明として相続分譲渡証書を作成するほか、相続分譲渡通知書を作成して譲渡について他の相続人に通知します。

なお、有償で譲渡した場合、受け取った対価に相続税の課税対象となりますので注意してください。

相続放棄、相続分がないことの証明、相続持分の譲渡のいずれかを行った相続人がいれば、その人の署名捺印がなくても遺産分割協議書を作成することができます。

相続発生前なら:遺言書という裏ワザ

 
上に紹介した例外を除き、遺産分割協議は、相続人全員の合意+署名捺印が原則です。
遺産分割協議をお手伝いするなかで私自身が痛感しているのですが、「相続人全員」というのは、場合によって厳しい要件になり得ます。
認知症の影響で署名捺印にあたって判断能力に欠ける相続人がした署名捺印のせいで、後になって遺産分割協議が無効とされることがあります。

相続人に行方不明者がいると相続人全員が揃わないので、協議を有効に成立させることができません。

このように遺産分割協議では相続人全員という要件が足かせとなり、遺産分割がスムーズに進まないことが多々あります。
それを故人が予め見越して、生前に対策を講じておけば良かったのですが…。
この場合、最もシンプルな対策としては遺言書の作成がおすすめです。
遺言書があれば面倒な遺産分割協議を開催せずにすむので、相続人全員という要件が問題となることなく相続手続を進められるのです。
 
面倒な遺産分割協議に遺族を巻き込まないために遺言書を書くって、思いやりのあるスマートな行為ですね。
遺言書を書くのを先延ばしにしていて結局、手遅れになったという残念な例が世間では相変わらず多いです。

まだの方はぜひ早めに書いておきましょう。
目次