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寄与分と特別寄与料

遺産分割で用いられる用語の中には、似たような用語があって、違いが分かりにくい用語があります。その一つが、寄与分特別寄与料です。

亡くなった人の財産の維持や増加に特別の寄与があったことに対して、相続で報いを受けることができる

という点は共通していますが、寄与分と特別寄与料は別個の制度です。

 
ここでは寄与分と特別寄与料の違いを整理してしてみました。

寄与分制度

特別受益と同じく、相続人間の公平を図るための制度です。
相続人の中に相続財産の維持増加にあたって特別の寄与があった相続人がいれば、その相続人は、遺産分割の際に他の相続人に優先して、遺産から寄与分にあたる財産をもらうことができます。

寄与にはいくつかの類型がありますが、代表的なのが、看護療養型といいます。亡くなったかたの生前に療養看護を行い、それによって医療費や看護費用の支出を押さえることができ、結果的に相続財産の維持に貢献したというものです。

特別の寄与があった相続人の相続分=(みなし相続財産×相続分率)+寄与分
※みなし相続財産=相続時の財産価額ー寄与分
寄与分が認められるためには、単に寄与をしただけでは足らず、特別の寄与をしていた必要があります。原則として無償で行った行為のみが対象です。また、配偶者による通常の家事労働や通常の親の介護は特別の寄与とは認められません。
特別の寄与の「特別」の意味
夫婦間の協力扶助義務、子やきょうだいの扶養義務など身分関係に基づき通常期待されるような程度を越える貢献をいいます。夫のために毎食ご飯を作ってあげた、日常的な世話をしたという程度では、残念ながら、特別の寄与とは認められません。
裁判では、排便や徘徊への対応があったかがどうかが判断の分かれ目となることが多いようです。
 
相続で介護の寄与分を主張するつもりなら、介護日誌をつけて、介護の具体的な内容を記録しておくのがおすすめです。

寄与分を認めてもらうのは、相続人の協議、調停、審判のいずれかによります。

具体的な寄与分をいくらにするかは、まずは相続人全員で話し合います。それで決まらなければ、家庭裁判所が判断を下しますが、期待するほどの金額にはならないのが一般的です。

 
亡くなった後の遺産分割に委ねるのでは、介護をしてくれた人が十分に報われないおそれがあります。

特別寄与料制度

相続人以外の親族が亡くなった方の生前に、その財産の維持や増加について特別の寄与をした場合、その親族が相続人に対して、特別寄与料として、金銭を請求できるという制度です。2018年の民法改正で新しく創設されました。この制度が利用される代表的な例として、息子のお嫁さんが亡くなった方の介護を無償で行っていたようなケースが考えられます。

寄与分制度と同様、認められるためには、特別の寄与である必要があり、一定の程度以上のものでないと認められません。

特別寄与料を請求できるのは、相続人等を除く親族に限られます

特別寄与料の請求があるような相続では、遺産分割協議は従来通り相続人だけで行います。このとき特別寄与料の請求があることを考慮して遺産分割を行います。

そのうえで、特別の寄与者が特別寄与料として金銭を相続人に請求するという仕組みになっています。相続人が複数いる場合には、各相続人は相続分に応じて特別寄与料を負担します。

当事者間の話し合いで決まらなかった場合には、家庭裁判所の判断を仰ぐことになります。

 
相続人であれ親族であれ、自分の介護してくれた人の恩に報いるには、その人が十分な額の財産を受け取れるよう遺言書を書いておきましょう。
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