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相続税の計算で引くことのできる葬式費用

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夫が亡くなり、お葬式や法事にけっこうお金がかかりました。相続税の計算に含めていい費用といけない費用があると聞きました。詳しく教えてください。
相続税額を計算するにあたって、課税価格から葬式費用を差し引くことが認められています。
葬式費用はそれなりの金額になりますし、場合によっては数百万円に上ることもありますから、費用を差し引くことで相続税が安くなるのは有り難いですね。
ですが、相続税の計算に葬式費用を含めるにあたっては注意が必要です。計算に含めてよいものと含めてはいけないものの判定が難しいからです。
この記事では、相続税の計算における葬式費用の基本的な考え方と個別の葬式費用の判定について分かりやすく説明しました。ぜひ参考になさってください。

葬式費用の基本的な考え方

葬式費用というのは遺族が負担すべき費用です。亡くなった方ご自身の債務ではありません。

相続税法の原則的な考え方からすると、本来は相続財産から差し引けない性質のものなのです。

しかし、被相続人が亡くなったことにより必然的に生じる費用であり、相続財産から支払われることも多いため、相続税の計算上、相続財産から差し引いて計算することが認められています。

例外的に認められているに過ぎないので、葬式に関連する費用なら何でも認められる訳ではなく、趣旨に沿ったものだけが限定的に認められることになります。

個々の費用の判定に入る前に、まずは法律の規定を確認しましょう。

法第13条第1項の規定により葬式費用として控除する金額は、次に掲げる金額の範囲内のものとする。(昭57直資2-177改正)

(1) 葬式若しくは葬送に際し、又はこれらの前において、埋葬、火葬、納骨又は遺がい若しくは遺骨の回送その他に要した費用(仮葬式と本葬式とを行うものにあっては、その両者の費用)

(2) 葬式に際し、施与した金品で、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものに要した費用

(3) (1)又は(2)に掲げるもののほか、葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの

(4) 死体の捜索又は死体若しくは遺骨の運搬に要した費用

ここでは、
・葬式の前後に生じた出費
・通常葬式に伴うと認められるもの

だけが葬式費用として控除できる、と理解しておけば十分です。

葬式の前後ってアバウトな表現ですが、葬儀の日よりかなり前の支払やだいぶ後になってからの支払は認められないということですね。

また、一般通念上も葬式に伴う費用と考えられるものでなければ認められないことが分かります。
もう一つ大事なのは、誰が支払った費用なのか、という点です。

相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が第一条の三第一項第一号又は第二号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。

一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
二 被相続人に係る葬式費用
これは、誰が払った費用でもよいという訳ではなく、払った人についても制限があるということです。
相続税の計算上差し引いてもOKなのは、相続人が支払った葬式費用に限られます(遺贈については説明を省略します)。
葬式費用は喪主が支払うのが通例ですが、実際には相続財産から支払うことも多いでしょう。この場合も、相続税の計算上、葬式費用として控除することができます。

個々の葬式費用の判定

個々の具体的な費用についてみていきましょう。葬式関連に関連して発生することが多い費用ついて、時系列で説明します。

ご臨終~安置まで

遺体の安置費用 ○

遺体の安置時に使用したドライアイス、ロウソク、花などの費用は葬式費用になります。

遺体の運搬費用 ○

海外など遠方で亡くなるケースもあります。ご遺体を飛行機で運ぶのにかかった費用など運搬費用は葬式費用として相続財産から差し引けます。

死亡診断書 ○

埋葬や生命保険の請求時に医師の書いた死亡診断書を提出します。死亡診断書の発行手数料は葬式費用として相続財産から差し引けます。

通夜・告別式

通夜・告別式で葬儀会社に支払う費用 ○

仮葬式と本葬式の両方を行った場合、両方にかかった費用を含めて構いません。

通夜・告別式での飲食費用 ○

弔問者への飲み物やおつまみ代などです。

お寺や教会に支払うお布施、戒名料、読経料など ○

領収書がなくても大丈夫です。支払先、支払金額、支払日等をメモしておきます。

心づけ ○

葬儀の受付をしてくれた人や運転手さんに渡した心付けは葬式費用に含めて構いません。

領収書がなくても大丈夫です。支払先、支払金額、支払日等をメモしておきます。

宿泊費や交通費 △

喪主自身の宿泊費や交通費は葬儀に伴う費用と考えられるため、葬式費用に含めて問題ありません。

ただし、遠方から葬儀に参列する人のために喪主が宿泊費や交通費を負担することもあるかと思いますが、この場合は、葬式費用に含めないほうがいいでしょう。通常葬式に伴う出費とまではいえないからです。

花輪・生花代 △

喪主が負担した分に限り、葬式費用に含めることができます。

会葬御礼 △

通夜や告別式の参列者に渡す会葬御礼は葬式費用として相続財産から控除できます。

ただし、香典返しをしない場合、会葬御礼が実質的な香典返しと考えられます。香典返しは葬式費用に該当しないため、この場合は、会葬御礼であっても葬式費用に含めないほうがよいでしょう。

香典返礼費用 ×

葬式で喪主が参列者から受取る香典は、参列者から喪主に対する贈与とされるため、被相続人の相続財産には含まれません。

そのため、香典返しも相続財産から控除できないと規定されています。

火葬

火葬費用 ○

埋葬許可証の発行費用 ○

還骨法要 ○

火葬が終わって祭壇に遺骨を安置してから執り行われる還骨法要は葬式費用に含まれます。法要の後、精進上げ(精進落とし)の会食があります。

精進落とし ○

還骨法要の後、精進落としとして会食を行います。このときの食事代や飲み物代などは葬儀費用に該当します。

初七日

初七日法要の費用 △

 初七日法要でお寺に支払うお布施は葬式費用に該当しません。ただし、例外があります。

最近は繰上げ初七日法要といって、告別式と同日に初七日を行うことが増えています。
このとき葬儀と初七日法要の費用が区分されていなければ、まとめて葬式費用に含めても問題ないと考えられます。

納骨式

納骨費用 ○

火葬後の遺骨をお墓や納骨堂に納める際には納骨式という儀式が執り行われます。その際に石材店に納骨費用を支払います。

四十九日や一周忌法要のときに併せて一緒に行うことが一般的ですが、葬儀直後や、火葬当日に行うこともあります。葬式から時間が経っていると、一見、葬式費用に該当しないように思いますが、納骨費用は葬式費用に含めて構いません。

これと一緒に請求されることの多い墓石の彫刻代は葬式費用にあたらないので注意しましょう。請求書で金額が分かれていない場合は、石材店に内訳を確認し、納骨費用のみを葬式費用に含めます。

樹木葬や散骨の費用 ○

最近増加しているのが、樹木の下にお骨を埋める「樹木葬」や山や海へまく「散骨」です。
この場合も儀式に直接関する費用であれば、原則として、葬式費用として相続財産から控除できます。

その他

お墓の購入費 △

お墓は葬式には直接関連しないため、葬式費用には該当しません。

お墓の購入代金は高額な傾向があるため、相続税の節税に使えないのはもったいないと思う人がいるかもしれませんね。

それなら、生前にお墓を購入しておきましょう。

お墓は祭祀財産として相続財産から区分されます。祭祀財産に相続税はかかりません。そのため、お墓の購入代金の分、相続財産を減らすことができるのです。

ただし、お墓の代金に未払があった場合、未払分は相続財産から控除できません。節税目的を兼ねて生前にお墓を購入するときは、その点にも注意しましょう。

まとめ

葬式費用については、宗教や地域による違いが大きいこともあり、法律上、細かい規定は設けられていません。

その判定にあたっては、以下のような税法の基本的な考え方を踏まえた上で、随時判断する必要があります。

  • 葬式の前後に生じた出費であること
  • 一般通念上も葬式に伴う出費と考えられること
  • 相続人が負担した出費であること

これにすべて該当すれば、葬式費用として相続財産から控除できる可能性が高いといえます。

自分で申告をなさる方は、葬式費用に該当しそうな出費があれば、インターネットの情報をいくつか裏を取りながら調べてみてください。

不明な点があれば税理士に相談してみましょう。

ちなみに、弊所では依頼者の方に該当しそうな出費をとりあえずすべて提出してもらい、それを一つ一つ確認し、葬式費用に該当するもの、葬式費用に該当しないものの債務控除の対象となるもの、相続税申告に関係しないものなどに分類しています。

葬式費用を漏れなく計上して、相続税を安くしましょう!

 

 

 

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