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自筆証書遺言書保管制度を利用できないケース2つ

相続遺言相談室 on the web

 
新しく始まった国の自筆証書遺言書保管制度を利用して遺言書を書きたいと思っていますが、人によってはこの制度を利用できないと聞きました。それってどのようなケースでしょうか?
7月からスタートした法務省の自筆証書遺言書保管制度にはメリットがたくさんあり、ほとんどの方におすすめできます。でも、人によってはこの制度を利用できないことがあります。
  • 遺言書を自分で手書きするのが難しい人
  • 遺言書保管所まで自分で出向くのが難しい人

のいずれかに該当すれば、この制度を利用したくてもできません。公正証書遺言を作成して公証役場で保管して貰うか、自筆証書遺言の作成自体が可能な場合は自筆証書遺言を自宅等で保管することになります。

制度の利用を検討するにあたって、自分が利用できそうかどうかを最初に確かめておきましょう。

今回の記事では、自筆証書遺言書保管制度を利用できない代表的なケース2つをご紹介します。

目次

遺言書を自分で手書きするのが難しい人

自筆証書遺言書はその名の通り、遺言者本人が自ら筆を取って書く必要があります。財産目録のような添付書類はパソコンで作成したり、遺言者以外の人が作成してもいいのですが、遺言書の本文だけは遺言者の肉筆でないと無効となってしまいます。
そのため、手の震えなどの持病や体力的な問題により、自筆証書遺言の作成が不可能なことがあります。
また、身体上の問題が無い場合であっても、手書きの文章を間違いなく書くというのは案外難しいものです。
遺言書の文章が短ければそれほど支障ないかもしれません。でも、複雑な内容だったり、付言事項に色々書いたりしてボリュームが多くなると、最初から最後まで一言一句間違いなく手書きで書くのは大変です。相当の気力や注意力が必要で、神経を使う作業となります。パソコンでの文書作成に慣れてしまっていると、元気な方であっても、難しいことがあるかもしれません。
このような事情で遺言書本文を自分で書けない場合には、保管の対象として提出する自筆証書遺言書自体が提出できませんので、保管制度の利用もできないことになります。
一方、公正証書遺言でしたら、遺言書の内容を公証人に話せば、それを基に公証人が遺言書を作成してくれます。
遺言書を自分で書くのが難しいという場合は、遺言書は公正証書遺言で作成する必要があります。この場合、遺言書は公証役場に預けることになります。

遺言書保管所まで自分で出向くのが難しい人

自筆証書遺言書を国に預かって貰うためには、遺言者本人が遺言書保管所まで出向く必要があります。法務局が遺言書保管所となっています。
どこの法務局でもいいというわけではなく、遺言書の保管の申請ができる遺言書保管所は、
  • 遺言者の住所地
  • 本籍地
  • 遺言者が所有する不動産の所在地
のうち、いずれかを管轄する法務局です。
遺言者が入院中や自宅療養中ですと、指定の法務局まで出向くのが難しいことがあるかもしれません。
遺言書保管所となる法務局は限られているので、近所の法務局で手続できるとは限りません。
弊所のある川崎市多摩区を例に、川崎市多摩区に住所と本籍地、不動産の所在地がある遺言者さんを考えてみましょう。
この場合、遺言書の保管申請先は横浜地方法務局の川崎支局です。川崎支局は川崎駅から徒歩10分。これは多摩区にお住まいの多くの方にとって、かなり遠いと感じるのではないでしょうか。
遺言書保管制度を利用するなら、そこまで自分の足で出向くことができることが前提になります。
遺言書保管制度では代理人による申請は認められていないため、遺言書保管所まで出向くことができないと制度自体が利用できません。
一方、公正証書遺言であれば、最寄りの公証役場を選ぶことができますし、外出ができなくても自宅や施設まで公証人が出張してくれるサービスも用意されています。
自筆遺言書の作成自体は可能な状態であれば、自筆証書遺言を作成し、保管についてのみ、国の制度を利用せず、従来通り、自宅等で保管する方法も考えられます。

まとめ:自筆証書遺言書保管制度を利用できないケース2つ

最近ラジオやテレビで自筆証書遺言書保管制度に関する情報を目にする機会が増えてきました。それらの情報に接して「この制度を使って遺言書を書いてみたい」とお考えの方も多いかと思います。しかしそもそもこの制度を利用できない場合があります。
この記事では、その代表的な例として
  • 遺言書を自分で手書きするのが難しい人
  • 遺言書保管所に自ら出向くのが難しい人
の2つを挙げました。
遺言書保管制度の利用を考えるにあたっては、自分はいずれかに該当しないか、最初に検討してみてください。
どちらにも該当しなければ、遺言書を書いて遺言書保管所に預けるという方法で問題ないでしょう。
遺言書を書くのに早すぎるということはありません。思い立ったら吉日で、早速取り組んでみてくださいね!
 
ただし、遺言書保管制度を利用する場合であっても、遺言書を一人で書くのは危険です。
遺言書で失敗したくないなら、専門家のアドバイスを受けながら作成するのが安心ですよ。
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