第4回:国際相続、自分のケースではどの専門家が必要?

まゆさん、前回「日本側と海外側で専門家が分かれる」って話でしたけど、具体的にどの専門家が必要なのかはケースによるんですよね?

そう。でも「ケースで決まる」というより、「やることで決まる」と考えた方がわかりやすいかもね。
相続税の申告が必要なら税理士、日本に不動産があるなら司法書士、というふうに。

なるほど。じゃあ自分の相続で何が必要かを洗い出せばいいんですね。

そういうこと。
日本側でやること、海外側でやること、それぞれに対応する専門家を整理してみましょう。

国際相続では、日本の手続きと海外の手続きが
同時に進むことがあります
「やること」で必要な専門家が決まります

相続税の申告が必要
→ 税理士(国際相続対応)
日本に不動産がある
→ 司法書士(相続登記)
外国籍の相続人がいる
→ 渉外相続の実績がある
行政書士・司法書士・弁護士等
(身分関係書類の収集)
準拠法の判断が必要
(被相続人が外国籍の場合)
→ 渉外相続に慣れた弁護士が
関与した方が安全なことが多い

海外で税務申告が必要
→ 現地のCPA・EA
(米国の税務代理資格など)
海外で相続手続きが必要
(プロベート・口座解約など)
→ 現地の弁護士

すべてが必要になるわけではありません
自分の相続に当てはまる「やること」を確認して
必要な専門家を把握しましょう

日本側:やることで必要な専門家が決まる

国際相続だからといって、すべての専門家が必要になるわけではありません。
自分の相続で「何をやる必要があるか」を確認して、それに対応する専門家を把握することが大切です。

相続税の申告が必要であれば、税理士が中心になります。
海外財産がある場合は、その評価や為替換算、さらに海外で課税があれば外国税額控除の検討も加わるため、国際相続の実務経験がある税理士が望ましいです。

日本に不動産がある場合は、相続登記が必要です。
2024年4月から相続登記が義務化されており、手続きは司法書士に依頼されることが多いです。 これは国際相続に限らず、普通の相続でも同じです。

外国籍の相続人がいる場合は、日本の戸籍だけでは続柄を確認できないため、出生証明書や婚姻証明書、宣誓供述書などの資料が必要になることがあります。
渉外相続の実績がある行政書士・司法書士・弁護士等が担当することがあります。

被相続人が外国籍の場合は、準拠法の判断が必要になることがあります。

準拠法とは「どの国の法律に従って相続を進めるか」ということで、原則は被相続人の本国法になります。

ただし、本国法を調べた結果「日本の法律に従う」と定められている場合もあり(これを「反致(はんち)」といいます)、判断には専門的な検討が必要です。

渉外相続に慣れた弁護士が関与した方が安全なことが多いです。

海外側:日本の専門家だけでは対応できない領域がある

海外で税務申告が必要な場合は、現地のCPAやEA(米国の税務代理資格)などの税務専門家が関与することがあります。
たとえば米国に一定額以上の資産がある場合は連邦遺産税の申告が必要になることがあります。 また、相続人が米国居住者(U.S. person)の場合は、一定額以上の相続財産を受け取ったときにIRSへの報告(Form 3520など)が必要になることがあります。

海外で相続手続き(プロベートや口座解約など)が必要な場合は、現地の弁護士の関与が必要または有用になることがあります。 国や州によって手続きの内容も大きく異なるため、日本から一律に手配するのは難しい領域です。

これらは日本の専門家だけでは対応しにくく、海外側の専門家が別途必要になることがある——これが国際相続の特徴です。

よくあるパターンで見てみると

元駐在員の家庭で、親が日本在住・海外に銀行口座が残っているケースなら、まず相続税の申告が必要かどうかを確認します。 必要であれば税理士が中心になり、海外財産の評価や課税範囲の確認を行います。 申告が不要な場合でも、海外財産があるなら一度は税理士に相談しておくと安心です。

海外口座の解約は、相続人本人が金融機関に連絡するのが基本です。 行政書士等が書類準備をサポートすることもありますが、解約自体は本人対応が原則です。

国や地域によっては現地の弁護士が必要になることもあります。 また、米国に一定額以上の資産がある場合は、連邦遺産税の申告のために現地のCPAやEAが必要になることもあります。

お子さんが海外に住んでいるケースでは、印鑑証明の代わりにサイン証明や在留証明が必要になります。 これは相続人本人が在外公館で取得します。

遺産分割協議書の調整は、行政書士や司法書士が担当することが多いです(紛争性がある場合は弁護士)。

お子さんに日本の相続税の申告や納付が関係する場合は、納税管理人の選任が求められることがあり、税理士や国内在住の親族が引き受けるのが一般的です。

お子さんが米国居住者(U.S. person)の場合は、IRSへの報告(Form 3520など)のために現地のCPAやEAへの相談が必要になることもあります。

被相続人が外国籍の場合は、準拠法の判断は渉外相続に慣れた弁護士、身分関係書類の収集は渉外相続の実績がある行政書士・司法書士・弁護士等が担当することがあります。

海外にも財産があれば、現地の弁護士(プロベート等)や税務専門家(現地の税務申告)も加わります。 関わる専門家の数が増えるため、連携体制のある事務所に相談するのが安心です。

大事なのは、自分の相続で「やること」を洗い出して、それぞれに対応できる専門家がいるかどうかを確認することです。

💡まゆさんのひとこと

国際相続で必要な専門家は、「やること」で決まります。
まずは、相続税の申告が必要か、日本に不動産があるか、外国籍の家族がいるか、海外で手続きが必要か——一つひとつ確認してみてください。
自分に当てはまる「やること」がわかれば、必要な専門家の全体像が見えてきます。
次回は、その専門家をどうやって選べばいいのか——大手と個人事務所の使い分けも含めて整理します。

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