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第4回:国際相続、自分のケースではどの専門家が必要?

前回、国際相続では複数の専門家が関わること、そして日本側と海外側で役割が分かれることを見た。
では、自分のケースではどの専門家が必要になるのか? この回では、パターン別に整理してみよう。
📌 この記事のポイント
必要な専門家は「やること」で決まる。自分のパターンで何をやる必要があるかを確認しよう。
必要な専門家は「やること」で決まる
まゆさんがシナモンロールを追加で注文した。華輪クンも「僕も」と手を挙げる。
「まゆさん、前回の話で専門家がたくさんいるのはわかったんですけど、うちの場合はどの専門家が必要になるんですか?
全員いるわけじゃないですよね」
「もちろん。全員が必要になるケースはむしろ少ないわよ。
大事なのは、自分のケースで『何をやる必要があるか』を見ること。やることが決まれば、必要な専門家も決まる」
「やること、ですか」
「たとえば、相続税の申告が必要なら税理士。日本に不動産があるなら相続登記で司法書士。海外の口座を解約するなら現地の手続きが要る。
——『国際相続だからこの専門家』じゃなくて、『このタスクがあるからこの専門家』なの」
「なるほど。やることで決まるんですね」
「そう。だから同じ『海外に口座がある家庭』でも、口座を解約する必要があるかどうか、相続税の申告が必要かどうかで、関わる専門家は変わってくる」

まずは自分のケースで「やること」を洗い出すことから。次の図解で確認してみましょう。
海外財産があるなら国際相続に慣れた税理士が望ましい
必要な場合のみ
必要な場合のみ
※すべてが必要になるわけではありません。
自分の「やること」に対応する専門家だけ確認すればOKです。
海外で暮らしていた時期がある家庭——困りごとによって最初の相談先が違う
駐在から戻った家庭に多い。華輪クンの家庭はこれ
Aに「相続人が海外にいる」が加わるケース
子が留学→海外就職しているケースなど
※詳しくは第2回をご覧ください
「じゃあ、華輪クンの家の場合を見てみましょうか。
第2回でやったパターンA——相続人は全員日本にいて、海外に財産がある」
「ですよね。父が駐在で何年かアメリカにいて、口座と保険がそのまま残ってる」
「こういう家庭——仕事や研究で海外に暮らしていた時期があって、口座や保険がなんとなく残っている——は、相続税の申告が必要かどうかの確認が大きなポイントになる」
「最初は税理士に相談するのがいいんですか?」
「それは困りごとによるわね。税金が心配ならまず税理士。海外の口座が動かせなくて困っているなら行政書士や現地の専門家。遺産分割で揉めそうなら弁護士。
——入口は人によって違う」
「じゃあ、誰に相談してもいいってことですか?」
「どこから入ってもいいけれど、大事なのは、その相手が国際相続の全体像を見渡せて、自分の守備範囲の外は他の専門家につないでくれること。前回話したことと同じね」
「ああ、『守備範囲をわかっている人に相談する』っていう話ですね」
「そう。で、相続税の申告が必要な場合は税理士が関わることになる。
海外に財産があると、その評価をどうするか、為替の換算はいつの時点か、二重課税の調整——こういう作業が加わる。だから国際相続に慣れている税理士の方がスムーズに進む」
「まゆさんみたいな税理士ってことですか」
「そうね」
「……でも、まゆさんの事務所って一人でしょう? そこまで全部回せるんですか?」
「いい質問。私の守備範囲は日本の相続税の申告。
それ以外の部分は、必要に応じて他の専門家につなぐ。一人で全部やるんじゃなくて、チームを組むの。
——そのあたりは次回、事務所の選び方と一緒に話すわね」
「わかりました。じゃあ、父のアメリカの口座はどうなるんですか? あれも税理士の仕事?」
「口座を解約する話は少し別の問題。相続税の申告とは別に、相続人本人が海外の金融機関に連絡するのが基本なの。書類の準備を行政書士等がサポートしてくれることもあるけれど、解約自体は本人が対応するのが原則」
「自分でやるんですか?」
「金融機関との手続きだからね。
国や金融機関によっては現地の弁護士が必要になることもあるけれど、まずは金融機関に問い合わせるところから。——このあたりは後の回で詳しくやるわね」
華輪クンはカプチーノのカップをくるくる回した。
「要するに、うちみたいなケースだと、相続税の申告と、海外の口座をどうするか。この二つが大きいってことですか」
「そういうこと。申告が不要な場合でも、海外に財産があるなら一度は税理士に確認しておくと安心よ。
見落としがあると後から大変だから」
家族が海外に住んでいるケース——「やること」が上乗せになる
「パターンB・C——家族の中に海外に住んでいる人がいるケースも見ておきましょう」
「兄弟が海外にいるとか、そういう場合ですよね。うちは全員日本にいるけど」
「たとえば、お子さんが留学先でそのまま就職して海外に住んでいるケース。
この場合、パターンAの話に加えて、いくつか『やること』が上乗せになる」
「上乗せ?」
「まず、海外に住んでいる相続人は印鑑証明が取れない。
だからサイン証明や在留証明を在外公館で取ることになる。
それから、日本の相続税の申告や納付に関して、納税管理人(日本に住んでいない人の代わりに税務署との窓口になる人)を選任することが必要になることがある」
「サイン証明……? それ何ですか?」
「印鑑証明の代わりに、本人が領事館の担当官の前で署名して、本人の署名であることを証明してもらう手続き。
海外に住んでいると印鑑登録ができないから、その代わりになるもの」
「それは本人が現地で取るんですか」
「そう、本人が在外公館に出向いて取る。これは専門家に代わってもらえない部分。
遺産分割協議書の取りまとめは行政書士や司法書士が担当することが多いけれど、その前提として本人がサイン証明を用意する必要がある」
「海外に住んでるだけで、こんなにやることが増えるんですね」
「パターンによって必要な知識が変わってくるから、全部を一度に覚えようとしなくていいの。まずは自分のパターンに関係するところから押さえていけば大丈夫」



全部じゃなくていいのか。うちはパターンAだから、まずそこから押さえていけばいいんですね。
被相続人が外国籍のケースは、渉外相続に慣れた弁護士に相談した方がいい
「あと、前回の図解に出ていた話で、外国籍の方が亡くなった場合ってどうなるんですか?」
「そこは正直に言うと、最初から渉外相続に慣れた弁護士に相談した方がいい」
「まゆさんでも難しいんですか?」
「まず入口の段階で、どの国の法律で相続を進めるかという判断が必要になるの。
これは『準拠法』の問題で、弁護士の領域。しかも被相続人の国籍や財産の所在地によって答えが変わる。
そこが決まらないと、誰が相続人なのか、相続分はどうなるのかも確定しない」
「じゃあ、税理士の出番はないんですか?」
「日本に財産があれば日本の相続税の申告は必要になることがあるから、税理士の出番はある。
でもそれは、準拠法の判断や相続人の確定ができた後の話。だから入口は弁護士なの」
「うちみたいなケースとは全然違うんですね」
「そう。このシリーズでは、被相続人が日本人・日本在住であることを前提に話を進めているの。
外国籍の方の相続は制度もルールも大きく異なるから、渉外相続の実績がある弁護士事務所を探してみて」
国際相続で必要な専門家は、「やること」で決まります。
自分のケースで何が必要かを整理すれば、全体像が見えてきます。
困りごとによって最初の相談先は変わりますが、大事なのは全体を見渡せる専門家に早めにつながることです。
次回は、その専門家をどうやって選べばいいのか——大手と個人事務所の使い分けも含めて整理します。
→第5回:国際相続の専門家、どうやって選べばいいの?
免責事項
このシリーズは、国際相続が関係するかもしれない方が、ご自身のケースで何が問題になりうるかを知り、専門家に相談する準備ができるようになることを目的としています。わかりやすさを優先しているため、法令の厳密な表現とは異なる場合があります。記事の内容は一般的な説明であり、個別の税務アドバイスではありません。具体的なご判断は、国際相続に詳しい税理士・弁護士などの専門家にご相談ください。
