第5回:国際相続の専門家、どうやって選べばいいの?

まゆさん、前回までにどんな専門家が必要かはわかったんですけど、じゃあどうやって選べばいいんですか?

大事なのは、国際相続のリスクが分かる人に、できるだけ早く相談すること。
国際相続では、住所・国籍・海外財産の有無などで確認事項が増えるから、早めの相談が大切なの。

大手の事務所に頼めば安心、かな?

大手には大手の良さがある。
でも、私がよく言うように、相続税の申告には「工場型」と「工房型」があって…。 分業体制で効率よく仕上げる工場型と、一人の税理士が最初から最後まで担当する工房型ね。
国際相続に限らない話だけど、何を大切にするかで事務所選びも変ると思うわ。

あなたに合った相談先は?
あなたに合った相談先は?
Q1日本語以外での継続的な
説明・書類対応が必要?
Yes
大手事務所が向きやすい
英語対応チームがある
事務所が安心
No
▼ 次へ
Q2被相続人は外国籍?
Yes
大手事務所 or
渉外相続に強い弁護士
外国法の確認が
必要になりやすい
No
▼ 次へ
Q3海外の要素はどのくらい?
海外不動産がある
複数国にまたがる
大手事務所が
向きやすい
現地の専門家との連携や
海外ネットワークが必要になりやすい
海外の金融資産が中心
相続人が海外側で動ける
大手でも
個人事務所でも対応可能
「小さな国際相続」
何を大切にするかで選ぶ

適切な専門家に、早めに相談すること

国際相続では、「誰に相談するか」と「いつ相談するか」の両方が大事です。

普通の相続でも、税理士への相談が遅れると特例が使えなくなったり、遺産分割の仕方で税額が大きく変わったりすることがあります。
国際相続ではこのリスクがさらに大きくなります。 住所・国籍・海外財産の所在など、国内相続にはない確認事項が加わるからです。

手続きを担当する専門家が税務リスクを知らずに進めると、善意の行動がリスクを生むこともあります。
国際相続のリスクが分かる専門家に、できるだけ早い段階で相談すること。
かなり進んでからでは取り返しがつかないこともあります。

もう一つ大事なのは、その専門家が分からないことを抱え込まない人かどうかです。
自分の守備範囲の限界を分かっていて、必要なときに他の専門家につなげられる人を選ぶことが大切です。

大手事務所の方が向きやすいケース

次のようなケースは、実務上、海外ネットワークや専門チームのある大手事務所が向くことが多いです。

次のようなケースは、実務上、国際相続に対応している大手事務所が向くことが多いです。海外ネットワークや専門チームを持つ事務所であれば、安心感があります。

被相続人が外国籍の場合は、どの国の法律で相続を進めるかの確認に外国法の知識が必要になる場合があり、弁護士その他の専門家との連携が求められやすくなります。

海外不動産がある場合は、日本の相続税でも財産評価基本通達に沿って評価しますが、通達で評価しきれない場合はその土地に詳しい専門家の意見などをもとに評価することになります。
国内財産のように資料がそろわないことも多いため、現地の不動産事情に詳しい専門家との連携が必要になりやすく、海外ネットワークのある事務所が向くことがあります。

相続人に日本語が通じない人がいる場合や、複数国にまたがる手続きが必要で相続人が自分で動けない場合も、こうした対応体制のある事務所が向きやすいです。

「小さな国際相続」は、大手でも個人事務所でも対応できる

一方で、次のような条件を満たすケースは「小さな国際相続」として、大手でも個人事務所でも対応が可能です。

・被相続人が日本国籍であること
・相続人全員と日本語でやり取りできること
・海外財産は金融資産(預金・上場株式・保険・年金など)が中心で、評価方法が比較的明確なこと
・そして、相続人が海外に通じていて、海外側の手続きに主体的に動けること。

相続税の申告には「工場型」「工房型」があります。
大手事務所の多くは分業体制の工場型。
年間数百件の実績と海外ネットワークで「全部お任せ」がしやすい反面、担当者が途中で変わることもあります。

一方、個人事務所は工房型。一人の税理士が最初から最後まで担当し、対話と設計の時間を大切にします。

ただし、国際相続に対応している個人の税理士事務所はごく少ないのが現実です。
当事務所はこの「小さな国際相続」に対応している個人の税理士事務所です。

「小さな国際相続」の海外要素は、その人が生きてきた結果として残っているものです。 駐在時代の口座、海外に永住した子ども、現地で入った保険——その裏にはご家族の人生があります。
家族の歩みを丁寧にたどることが、財産の洗い出しの精度にもつながります。

工場型か工房型か。何を大切にするかで、選ぶ形は変わります。

💡まゆさんのひとこと

国際相続では、適切な専門家に早めにつながることが結果を左右します。

私が得意としているのは、被相続人が日本国籍で、海外の金融資産が中心の「小さな国際相続」です。
海外の要素は、その人が生きてきた結果として残っているもの。
だからこそ、ご家族の歩みを理解した上で、海外要素を適切に処理しながら日本の相続税申告を丁寧にやりきること。そして、海外側の手続きや期限など国際相続特有のリスクを把握して、必要な注意喚起をすること。
それが日本の税理士である私の役割だと考えています。

小さな国際相続でも、法律面の判断が必要になる場面は少なくありません。渉外相続に対応できる弁護士と連携できる体制を整えています。 外国籍の被相続人や海外不動産があるケースは、大手事務所をお勧めすることもあります。

次回は、国際相続の手続き全体の流れと、10ヶ月の期限の中でやるべきことを整理します。

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