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第5回:国際相続の専門家、どうやって選べばいいの?

前回、自分のケースではどの専門家が必要かを整理した。 では、その専門家をどうやって選べばいいのか?
この回では、大手事務所と個人事務所の使い分けを含めて考えてみよう。
📌 この記事のポイント 大手か個人かではなく、「何を大切にするか」で選ぶ。
まずは国際相続のリスクがわかる専門家に、早めにつながること。
適切な専門家に、早めにつながること
カフェの窓から差し込む光の角度がさっきとは変わっている。午後が少しずつ深まっていた。
「まゆさん、前回までにどんな専門家が必要かはわかったんですけど、じゃあ実際にどうやって選べばいいんですか
相続専門って書いてある事務所はネットでいくらでも出てくるけど、国際相続に対応できるかどうかがわからなくて」
「そこが難しいところなのよね。『相続専門』と『国際相続に対応できる』は別の話だから。
サイトに『国際相続対応』と書いてあっても、実際の対応力はまちまちなの」
「じゃあ何で見分ければいいんですか?」
「見分ける視点はいくつかあるけれど、一つは、国際相続のリスクをわかっているかどうか」
「リスク?」
「たとえば、海外に財産があると普通の相続にはない確認事項が増える。
住所・国籍・海外財産の所在、期限の違い
——そういうリスクをわかっている人なら、最初の相談の段階で確認すべきことを押さえてくれる。
わかっていない人は、普通の相続と同じように進めてしまう」
国際相続ではそのリスクが普通の相続より大きい。
リスクを知らない専門家が普通の相続と同じ感覚で進めてしまい、後から取り返しがつかなくなることもある。だから、できるだけ早い段階で相談すること。
「もう一つの視点は?」
「わからないことを抱え込まない人かどうか。
前回も話したけれど、自分の守備範囲の限界をわかっていて、必要なときに他の専門家につなげる人を選ぶこと」
「前回の『守備範囲』の話ですね」
「そう。案件によっては税理士一人で完結できることもあるけれど、法律面の判断が必要になったり、海外側の手続きが絡んだりすると、一人では対応しきれない場面が出てくる。
そのときに抱え込まずにつなげる人かどうか」

国際相続では、適切な専門家にできるだけ早くつながること。かなり進んでからでは取り返しがつかないこともあります。
渉外相続に強い弁護士が
向きやすい
専門的な検討が必要になりやすい
複数国にまたがる
向きやすい
必要になりやすい
相続人が海外側で動ける
対応できることがある
このケースに当たります
※すべてのケースをカバーするフローではありません。
迷ったら、まず国際相続の実務経験がある専門家に相談してみてください。
大手事務所が向きやすいケースもある
「じゃあ、大手の事務所に頼めば安心ですか?」
「大手には大手の良さがある。
海外ネットワークや専門チームを持っている事務所なら、幅広い案件に対応できる」
実務上、大手事務所が向きやすいケースがある。
被相続人が外国籍の場合。どの国の法律で相続を進めるかの判断が必要になり、弁護士との連携が求められやすい。
海外不動産がある場合。日本の相続税でも評価が必要だが、現地の事情に詳しい専門家との連携が要る。
相続人に日本語が通じない人がいる場合や、複数国にまたがる手続きで相続人が自分で動けない場合も、対応体制のある事務所が向きやすい。
「うちの場合はどうなんだろう。父は日本人で、海外にあるのは口座と保険と米国株。不動産はない」
「華輪クンの家庭は、次の話に当てはまると思うわ」
「小さな国際相続」は、大手でなくても対応できることがある
「このシリーズで第1回から話してきた『小さな国際相続』
——被相続人が日本人で、相続人全員と日本語でやり取りできて、海外財産は金融資産が中心。
こういうケースは、大手でなくても対応できることがあるの」
「でも実際、個人の税理士事務所で国際相続をやってるところってあるんですか?まゆさん以外に聞いたことないけど」
「正直、まだ少ない。だから今は大手に行くケースが多いわね。
大手が特別にいいからというよりも、他に選択肢が少ないから」
「じゃあ、やっぱり大手しかないってことですか」
「いや、少しずつ増えてきている。
きっかけは顧問先からの相談。『実は父にアメリカの口座が残っていて』と言われて、そこから国際相続に取り組み始める——そういうパターンが多い」
華輪クンは腕を組んだ。
「……まゆさん、ちょっと聞いていいですか。
まゆさんの事務所は大手じゃないですよね。正直に言って、大丈夫なんですか?」
まゆさんは一瞬だけ間を置いた。
「いい質問。でもね、大手だから国際相続に対応できているとは限らない。
さっき話した『リスクをわかっているか』『守備範囲の外を抱え込まないか』は、大手でも個人でも同じように問題になるの」
「じゃあ、大手か個人かはそこまで重要じゃない?」
「大事なのは、自分に合うスタイルを選ぶこと。
私がよく言うように、相続税の申告には『工場型』と『工房型』があるの。
分業体制で効率よく仕上げる工場型と、一人の税理士が最初から最後まで担当する工房型。
大手事務所の多くは工場型。年間数百件の実績と海外ネットワークで、全部お任せがしやすい。でも担当者が途中で変わることもある」
「まゆさんは工房型」
「そう。一人で最初から最後まで担当する。対話の時間を大切にしている。
これは国際相続に限らない話だけれどね」
「じゃあ、まず工場型か工房型か自分に合うスタイルを考えて、その中で国際相続に対応できる事務所を探す、っていう順番ですか」
「そういうこと。さっき話した見分ける視点はそこで使うの」
「だから私は、家族の歩みを丁寧にたどることを大事にしている。
『小さな国際相続』の海外要素は、その人が生きてきた結果として残っているものだから。それが財産の洗い出しの精度にもつながる」
「……なるほど。まゆさんが言う『小さな国際相続』って、制度の話だけじゃなくて、そういう意味もあるんですね」
ただし、国際相続に対応できる個人の税理士事務所はまだ少ないのが現実だ。



工場型か工房型か、まず自分に合うスタイルを考える。その中で国際相続に対応できる事務所を探す——この順番ですね。
国際相続では、適切な専門家に早めにつながることが結果を左右します。
大手事務所が向くケースと、個人事務所でも対応できるケースがあります。
大事なのはどちらが正解かではなく、自分のケースに合った形を選ぶこと。
私が得意としているのは、被相続人が日本国籍で、海外の金融資産がちょこっと混じっている「小さな国際相続」です。
海外の要素は、その人が生きてきた結果として残っているもの。
だからこそ、ご家族の歩みを理解した上で、海外要素を適切に処理しながら日本の相続税申告を丁寧にやりきること——それが私の役割だと考えています。
法律面の判断が必要になる場面では、渉外相続に対応できる弁護士と連携できる体制を整えています。
外国籍の被相続人や海外不動産があるケースは当事務所の守備範囲外となりますので、大手事務所や渉外相続の実績がある専門家をお探しください。
次回は、国際相続の手続き全体の流れと、10ヶ月の期限の中でやるべきことを整理します。→第6回:国際相続の期限、10ヶ月だけ気にしていれば大丈夫?
免責事項
このシリーズは、国際相続が関係するかもしれない方が、ご自身のケースで何が問題になりうるかを知り、専門家に相談する準備ができるようになることを目的としています。わかりやすさを優先しているため、法令の厳密な表現とは異なる場合があります。記事の内容は一般的な説明であり、個別の税務アドバイスではありません。具体的なご判断は、国際相続に詳しい税理士・弁護士などの専門家にご相談ください。
