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民法と相続税法の違い

相続で従うべきルールを定めている法律は、主に民法と相続税法です。

民法と相続税法で、相続に関する取扱は基本的には同じですが、一部異なっているものがあります。

 
特に気をつけたい違いを以下の表にまとめました。
  民法 相続税法
法定相続人に含める養子の数 制限なし 実子がいる場合、1人
実子がいない場合、2人まで
相続放棄した人 相続人の数に入れない
(初めから相続人でなかったとみなされる)
法定相続人の数に含めて計算する
財産の贈与

贈与した財産(年数制限なし)を相続時の価額で特別受益として持ち戻し

相続時精算課税制度を適用している場合
→制度を適用した相続財産を贈与時の価額で相続財産に加算

相続時精算課税制度を適用していない場合
→3年以内の贈与財産を贈与時の価額で相続財産に加算

 

みなし相続財産

特別受益者の持ち戻し、寄与分の差し引きなど

生命保険金、死亡退職金、生命保険契約に関する権利など

 

こんな風に取扱いが異なるせいで混乱してしまい、誤って理解していることがしばしばあります。

でも、民法と相続税法のどちらのルールを適用すべきなのかは、具体的な場面に応じて決まっているので、それをしっかり確認すれば大丈夫です。もちろん、相続税の計算は、民法ではなく相続税法のルールに従って行います。

ちなみに、このような取扱いの違いが生じる原因のひとつに、二つの法律の理念が異なっていることがあります。

・民法は、公平を理念としている
・相続税法は、強制的な金銭徴収を理念としている
みなし相続財産とは、本来の相続財産ではないものの、相続人間の公平の観点などから、相続財産に含めるのが妥当とされている財産をいいます。
上の表に示したとおり、民法と相続税法ではみなし相続財産とされるものが異なるため、注意が必要です。

生前贈与した財産について、民法と相続税法の取扱いの違い

 
生前贈与が相続でどう取り扱われるのかについて、ご質問を受けることが多いです。

民法と相続税法で取扱が異なるため、区別して理解する必要がありますが、ここでは遺産分割で適用すべき民法上の生前贈与の考え方について説明します。

民法上、相続財産に持ち戻す必要がある生前の贈与

  • 結婚や養子縁組のための贈与
  • 生活の資本として受けた贈与(扶養義務に基づく援助は含まない)

     
    教育費が「生活の資本として受けた贈与」として持ち戻し対象になるか否かは、個々の事情により個別に判断されます。

NOTE

相続税法とちがって年限は設けられておらず、昔の贈与であっても持ち戻しの対象となります。

なお、遺留分の計算では、持ち戻しの対象となるのは、相続人に対する贈与では相続開始前10年間になされた贈与、相続人以外の者に対する贈与では相続開始前1年間になされた贈与に限られます。

 
遺産分割と遺留分の計算で取扱いが異なりややこしいですが、この違いにも注意してください。

受贈財産が相続発生時までに滅失・毀損していても、持ち戻しの対象となります。

生命保険金は原則的には持ち戻しの対象とはなりませんが、他の相続人との間に著しい不公平が生じる場合には持ち戻しの対象となることがあります。

相続人が生前に持ち戻し不要の旨を遺言などで意思表示していた場合には、持ち戻しをしないでかまいません。
また婚姻期間が20年以上の夫婦間での居住用不動産の贈与の場合は、持ち戻しの意思表示がなくても、意思表示があったものと推定します。


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