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障害者のための贈与税の非課税制度 特定贈与信託とは?
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障害を持つ子になるべく財産を多く残してあげたい。
でも、相続税やら贈与税やらで財産が目減りするのはしょうがない・・・?
特定贈与信託という障害者を対象とした贈与税の非課税制度があります。
障害者の生活の安定のために特別に設けられた制度です。
この制度では非課税限度額が最大6,000万円と大きく、まとまった金額を非課税で渡せます。
税金上のメリットがあるだけでなく、財産管理機能も付いています。信託銀行が管理運用したお金を定期的に受け取ることができ、一度に受け取るのではなく、生活に必要な金額を少しずつ受け取ることができます。
さらに、もしも障害を持つ子がお金の全額を受け取る前に亡くなってしまったときのために、残ったお金をお世話になった人や施設に寄付するよう、あらかじめ指定しておくことまでもできてしまいます。
非課税枠の享受と財産の管理運用、そして定期給付。さらには寄付まで信託契約一つで実現できてしまうので、障害を持つ子がいる親御さんにとって、とても心強い制度のはず。
でも、実際には知名度が低く、その存在すら知らないかたも多いようです。
特定贈与信託とは?
障害者の生活を安定させることを目的し、信託の仕組みを通じて財産を贈与する制度です。
障害者の親などが委託者となり、信託銀行を受託者として信託契約を締結し、財産を信託します。信託銀行は信託された財産を安全な方法で管理運用します。受益者である障害者は、信託された財産から生涯にわたり、お金を生活費や医療費として定期的にもらうことができます。
特定贈与信託に関与すると機関
委託者:障害者の親(親以外の親族や篤志家もOK、複数人でもOK)
受託者:信託銀行
受益者:障害者
信託する財産は主に金銭です。換金性が高いものであれば有価証券も信託できます。
特定贈与信託では、通常、土地は対象となりません。
しかし、家賃などの地代収入がある土地や建物であれば、特定贈与信託を扱っている不動産信託会社があります。
現金はほどんどないけど不動産はあるというご家庭は、検討してみてもよいかもしれません。
特定贈与信託の対象者
この制度は誰でも利用できるというわけではありません。障害者、しかも特別障害者または特定障害者に区分される障害を持っている人だけが受益者としてこの制度を利用できます。
区分 | 非課税限度額 | |
特別障害者 | 重度の知的障害者 | 6,000万円 |
1級の精神障害者 | ||
1級・2級の身体障害者 など | ||
特定障害者 | 中軽度の知的障害者 | 3,000万円 |
2級・3級の精神障害者 など |
特定贈与信託の非課税限度額
親から子へとお金を渡す場合、通常は、1年で110万円を超える金額に対して子に贈与税が課されます。
これに対して、特定贈与信託を利用してお金を渡すと、信託銀行を通じて親から子への贈与があったとみなされる(みなし贈与)ものの、一定の金額まで税金は課されません。
非課税限度額は、特別障害者と特定障害者で異なります。
- 特別障害者には、6,000万円
- 特定障害者には、3,000万円
の贈与税の非課税枠が認められています。
特定贈与信託を利用すると贈与したときに非課税限度額までは贈与税がかかりません。もちろん、贈与した分だけ親の財産は減りますので、将来的な相続税も減らすことができます。親から障害のある子へと財産を移転するときに、税金で財産が目減りしてしまうのを防ぐ効果があります。
非課税のための手続き(障碍者非課税信託申告書提出)
特定贈与信託で贈与税の非課税を受けるためには、税務署への申告が必要です。
以下の書類を用意し、信託銀行を経由して財産を信託する日までに所轄の税務署に提出します。
- 障害者非課税信託申告書
- 特定障害者扶養信託の契約書(写し)
- 障害の区分に応じた証明書(障害者手帳など)
- 信託受益権の価額の計算明細書
- 住民票の写し
特定贈与信託のメリット
・財産を安全に管理してもらえる(財産管理のプロである信託銀行が管理してくれる)
・財産が定期給付される(多額のお金を一度に渡して散財したり詐欺や盗難にあったりしてお金を失うのを防ぐことができる)
障害のある子が相続などで一度にたくさんのお金をもらっても、お金を計画的に使うのは難しいのではないか、だまし取られないだろうかと心配する親御さんは多いです。特定贈与信託による定期給付が可能になれば、この不安はだいぶ軽くなるのではないでしょうか。
特定贈与信託の注意点
ただし、この制度、手放しで素晴らしいというと、そうでもありません。
場合によりデメリットにもなる注意点がいくつかあります。
ここでは気をつけたい主なポイントをあげました。
・元本割れリスクあり
・ペイオフの対象外
・途中解約できない
・成年後見人が必要なことがある
まず、信託銀行への支払が発生します。
例えば、三菱UFJ信託銀行では、
としています。
1,000万円を信託したら33万円の信託報酬を支払うことになりますね。
子がなくなる前の間、信託銀行というプロに財産を管理運用してもらい、一生涯定期給付を行ってもらうのですから、それなりの料金がかかるのは当然です。ただ、家族信託などで家族に信託すれば報酬はゼロで済むこともありますから、それに比べると高いと感じる人もいるかもしれません。
【信託報酬の各社比較 2021年12月現在】
三井住友信託銀行 | 三菱UFJ信託銀行 | みずほ信託銀行 | JA神奈川 | |
信託報酬(信託設定時) | 信託元本×3.3%(税込) | 信託元本×3.3%(税込) | ||
信託報酬(信託期間中) | 信託元本×1.65%(税込) | 無料 | 別途 | 期初の信託元本が2,000万円超 52,800円/年(4,400円/月で月割り) 期初の信託元本が2,000万円以下 26,400円/年(2,200円/月で月割り) |
※参考情報です。その他手数料などかかることがあります。詳しい情報は各銀行にお問い合わせください。
また、特定贈与信託の締結にあたって、障害の程度によって、成年後見人をつけるよう求められることがあります。成年後見人が法律的な要件となっているわけではありませんが、受託者である信託銀行がそれを条件としているのであれば、成年後見人がをつけざるを得ないでしょう。成年後見人がつくことによるデメリットもありますから、特定贈与信託のためだけに成年後見人をつけるのであれば、慎重に考えたほうがいいかもしれません。
詳しい情報
以上、特定贈与信託について駆け足でご紹介しました。もっと知りたいかたは、以下のサイトが参考になります。
特定贈与信託にはメリットが多く、もっと活用されてよい制度です。
ですが、信託銀行は積極的に宣伝していませんし、専門家が相続対策としてこの制度を提案する機会も稀と思われます。
障害を持つ子がいるかたで、はじめて特定贈与信託の存在を知ったという人は、この機会にぜひ利用を検討してみてください。
もっとも、親亡き後の対策として有効なのは特定贈与信託に限られません。生命保険信託や家族信託といった別の信託の仕組みも考えられますし、信託以外の対策ももちろん色々あります。
心身障害者扶養共済制度は、障害を持つ子の親が毎月掛金をおさめておけば、親が亡くなった後、その子に一定額の給付金が終身年金で支給されるというもので、全国の地方公共団体が実施している公的な制度です。
この場合も親が支払う共済掛金はみなし贈与となりますが、子が給付金を受け取っても贈与税や相続税はかかりません。また、掛金は全額が所属控除の対象となります。
心身障害者扶養制度について詳しくはこちらをどうぞ。