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【税制改正】年110万円までの贈与、このままで大丈夫?押さえるべきポイント

相続税を減らすために年110万円以内の贈与を行うのは人気のある節税対策です。年110万円以内の贈与であれば贈与税がかからず贈与税の申告も必要ないため、手軽に実行することができますね。

生前贈与に関する税金では2024年からルールが大きく変わります。政府は2023年8月3日、生前贈与のルール改正を盛り込んだ税制改正案を閣議決定しました。新しいルールは2024年1月1日以降に贈与される財産から適用されます。

それに伴い年間110万円までの贈与についても、従来のやり方のままでは税負担が増大する可能性がでてきました。私たちの生活に直接影響を与える重要な改正ですので、しっかりと理解して対策したいもの。

この記事では贈与税のルール改正を取り上げ、年110万円までの贈与について賢い贈与の方法をご紹介します。記事を読めば、新ルールのもとで無駄な税金を支払うことなく資産を守るにはどうしたらいいかわかります。

贈与税の課税方式は2つある

贈与税は、個人から贈与により財産を取得したときにかかる税金です。贈与税には暦年課税と相続時精算課税という2種類の課税方式があります。

暦年課税では、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与でもらった財産の価額を合計し、その合計額から基礎控除額110万円を差し引いた金額に対して税率を乗じて贈与税の税額を計算します。この方式では、1年間に贈与者が贈与する財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税は発生しません。

相続時精算課税は、贈与を受けた人の選択により贈与税と相続税を通じた課税が行われる仕組みです。この制度を選択すると、累計2,500万円までは贈与税が免除されますが、限度を超えた分に対して20%の税率で贈与税が課税されます。贈与者が死亡した時点で贈与された財産すべてを相続財産に加算して相続税を計算します。その際、すでに納税した贈与税額は相続税額から控除できます。

2種類の方式のうち原則的なのは暦年課税です。相続時精算課税は税務署に届出を提出することで利用を開始できます。贈与税の申告も納税も不要な年110万円以内の贈与であれば、暦年課税による贈与にあたります。

生前贈与の持ち戻しとは?

暦年課税による贈与では「生前贈与の持ち戻し」というルールが適用されます。これは贈与者が亡くなったときに贈与者が生前に贈与した財産を相続財産に足し戻して相続税を計算する必要があるというものです。相続税を逃れようとして生前贈与を行う人たちが増えてしまうことを防ぐために設けられている制度です。

持ち戻しは年110万円までの贈与にも適用されます。100万円の贈与を行った2年後に亡くなったとします。この場合、贈与の時点では贈与税の申告も納税も必要ありませんが、相続税の計算ではこの100万を相続財産に加算して計算することになります。

【改正】暦年贈与では持ち戻し期間が延長

暦年課税での持ち戻しについて、改正前のルールでは死亡以前3年間の贈与のみを持ち戻して加算することになっていました。今回の改正では持ち戻し期間が3年から7年に延長されました。これにより相続税の課税対象となる財産の額が増加し、相続税の負担も増加する可能性があります。

相続開始から7年以内に毎年100万円、合計700万円の暦年贈与を受けた場合を考えてみましょう。従来は3年間の持ち戻し期間により、300万円のみを相続財産に加算しました。
改正後は持ち戻し期間が7年間に延長されたことにより、700万円すべてが相続財産に加算されるため、増えた分の400万円について相続税の負担が120万円増加します(税率30%の場合)。

【改正】相続時精算課税では年110万円の基礎控除額が新設

いっぽうの相続時精算課税制度は、今回の改正で年間110万円の基礎控除額が新設されました。改正後の相続時精算課税では、年110万円までの贈与であれば、贈与税は非課税となり、贈与税の申告も不要、かつ相続時の持ち戻しも必要ありません。どんなに死亡直前の贈与であっても、年110万円までの贈与であれば相続財産にいっさい加算しなくていいのです。

持ち戻し期間が3年から7年に延長された暦年課税に比べて、相続時精算課税制度は使い勝手が向上したといわれます。相続時精算課税により生前贈与を行うことで相続財産を確実に減らすことができます。2024年からの年110万円までの贈与で賢く節税するには相続時精算課税制度の利用がおすすめです。

相続時精算課税制度を利用するには?

相続時精算課税制度の利用を開始するには、贈与を受けた人が「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。

贈与のあった翌年の2月1日から3月15日までの間に受贈者の住所地を管轄する税務署に提出します。届出書は税務署の窓口や国税庁のホームページで入手できます。

届出書を提出する際には、贈与を受けた人や贈与者の戸籍謄本など、贈与を受けた人の氏名、生年月日、贈与者の推定相続人または孫であることを証する書類も必要です。

相続時精算課税制度の注意点

相続時精算課税制度の利用にあたって注意したいポイントを2つあります。

1つめは相続時精算課税の対象者についてです。相続時精算課税はどんな贈与にも利用できるわけではありません。

相続時精算課税を利用できるのは、

贈与者:60歳以上の父母または祖父母
受贈者:18歳以上の子または孫

である場合に限られます。

若いうちから暦年贈与を始めたいという人や、子や孫以外の親類知人に贈与したいときは、暦年課税によるほかありません。

2つめは相続税の節税のために生前贈与を行うのなら、贈与をきちんと成立させる必要があるということです。もっともこれは相続時精算課税に限ったはなしではなく暦年贈与でも同じです。

贈与とは、お金や物などの財産を無償で他の人に渡すことを約束し、その人がそれを受け取ることで成立する法的な約束のことです。

  • 贈与を受けたはずの人がその財産の存在や贈与の事実を知らない
  • 贈与が行われた証拠が何もない

というような場合ですと、たとえ相続時精算課税選択届出書が提出されていたとしても、税務署が贈与の事実を認めてくれない可能性があります。

実際に100万円の現金を贈与していても、単に「お金を貸しただけ」「お金を預けただけ」とみなされてしまうかもしれません。そうなると貸付金や預け金として相続財産に持ち戻す必要が生じ、せっかくの生前贈与がなかったことになります。当然、相続税の節税効果もありません。

そうならないためには、

  • 贈与契約書を作成する
  • 贈与は現金手渡しでなく銀行振込など履歴が残る方法で行う
  • 贈与した財産は受贈者が管理する

などをすることで、贈与であることが客観的にも明らかであるように整える必要があります。

まとめ

この記事では2023年の税制改正にともなう贈与税のルール変更について解説しました。

従来の暦年贈与で持ち戻し期間が死亡前3年から7年に延長されたのに対して、相続時精算課税では年110万円の基礎控除額が新設され、基礎控除内の贈与であれば贈与税の申告と納税が不要になるほか、相続時の持ち戻しも必要ありません。

新しいルールのもとでは年110万までの贈与であれば、相続時精算課税制度を利用することで相続財産を確実に減らして節税できます。税務署に届出を提出して、せっかくの贈与が無駄にならないようにしましょう。

相続時精算課税選択届出書の作成や提出は税理士に依頼することもできます。一般の税理士事務所では対応していないことが多いため、相続を専門に扱っている税理士に依頼するのがよいでしょう。

弊所でも生前贈与に関するご相談を受け付けています。失敗しない贈与のやり方や年間110万円までの贈与以外の相続税対策についても相談できます。

税理士とくだ
「生前贈与を自分だけで実行するのはちょっと不安」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
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