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相続税申告って自分でできますか?
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でも自分でやって本当に大丈夫?
相続税の申告をできれば自分でやってみたいという方は多いです。
相続税申告が自分でできるかどうかの判断にあたっては、それを自分でやることのリスクを見極めることが大切です。
自分でやってもリスクの低い案件であれば、一般の方が自力で申告することは十分可能です。
以下では、自力申告のリスクを考える上でのチェックポイントについて解説しました。
相続税申告、自分でできる?
相続税の申告書の実物をご覧になったことはありますか。
見ていただくと分かるように、相続税申告書はとにかく分厚い。申告書自体が第1表から第15表まであるほか、かなりの量の添付資料がついています。所得税の確定申告とはボリュームがまったく違います。
見るからに大変そうな相続税の申告。これまで、自分でやろうとする人は少数派でした。統計によると、約10件中9件の相続税申告に税理士が関与しています。
でも最近では自分でやってみたいと考える人が増えています。税法が改正されて相続税申告の対象者が増えたこと、必要な情報をインターネットで容易に調べられるようになったことが背景にあります。
実は相続税の申告を自分でできるかどうかは、案件ごとに正解が異なります。
相続人が自分でやってもリスクの低い案件であれば自力申告でも問題ありませんが、リスクの高い案件にチャレンジすると貴重なお金や時間を無駄にしてしまうかもしれません。
自分のうちの相続税申告はどうなのか、以下で確認してみましょう。
自力での相続税申告の危険度 チェックポイント
1.相続財産に土地や非上場株式が含まれていない
相続税評価の中で特に難しいのは土地と非上場株式の評価です。
賃貸アパートや貸駐車場といった自宅以外の土地であれば、さらに難しくなります。
故人が中小企業の社長さんですと相続財産に非上場株式が含まれる場合がありますが、非上場株式の評価には高度な専門知識が必要です。
逆に言うと、相続財産に土地も非上場株式も含まれず、主な相続財産が預貯金や上場株式であれば、評価を間違える可能性は低いので自力で申告するリスクも低いといえます。
2.土地の形が正方形や長方形である
土地をお持ちの場合であっても、住宅街の区画整理された正方形や長方形の土地であれば、評価は比較的簡単です。
いびつな土地や間口が狭い土地、奥行きが長すぎる土地などは補正率を使って評価額を減額することができます。補正率の算定には距離や角度の測定が必要で、専用のソフトやツールを使わないと難しいです。一般の方にはハードル高いといえます。
補正率の適用がない整形の土地なら、評価の基となる資料さえしっかり集められれば評価自体は難しくありません。自力で申告しても問題なさそうです。
3.相続財産が基礎控除額をそれほど上回らない
相続税は原則として相続財産のうち基礎控除額を超えた部分に対して課税されます。
基礎控除額は次の算定式により計算します。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
例えば、相続人が配偶者と子2人という家庭の場合、基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)です。ここで、相続財産が5,000万円だったとしましょう。法定相続割合で分割したとすると、配偶者の税額軽減の以外の特例を考慮しない場合であっても相続税額は合計10万円で済みます。
このように相続財産が基礎控除額を大きく上回っていなければ、課税対象の金額自体が小さいため、相続税額は高額になりません。
仮に間違って申告した場合には制裁金や利息として余分な支払が生じることになりますが、これらはいずれも相続税額に一定の料率をかけて算定されるため、相続税額が少なければ制裁金や利息も少額です。
たとえ間違っていても実害が少ないという意味で、自力で申告するリスクは低いといえます。
4.配偶者が相続する割合が大きい
亡くなった方の配偶者が相続する分については、相続税の申告を要件として配偶者の税額軽減という特例が適用できます。
この特例を適用すると、配偶者の相続分に対しては1億6,000万円まで相続税がかかりません。
もし配偶者がすべての財産を相続するなら相続税額はゼロ。なので、申告書に間違いがあったとしても制裁金や利息はかかりません。
配偶者以外の相続人も相続するケースはどうでしょうか?配偶者が相続する割合が大きいほど他の相続人の相続割合は小さくなり、税額も減額します。それに比例して制裁金や利息の額も低く抑えられるため、たとえ間違って申告したとしても損失は限定的です。
配偶者が相続する割合が大きいなら、自力申告のリスクは低いです。
5.自宅を配偶者か同居の親族が相続する
亡くなった方の自宅を配偶者か同居の親族が相続する場合、「小規模宅地等の特例」という特例を適用し、一定の面積まで土地の課税価額を80%減額できます。
都心の地価の高い地域の相続ではこの特例によって相続税の負担を大幅に軽くすることができます。
相続税額がゼロか少額ですむなら、仮に間違えて申告したとしても、制裁金や利息もそれほどの額にはなりません。
実務上は小規模宅地等の特例の適用にあたっては適用要件や計算方法で注意すべき点が色々あり、慎重な判断が必要な場合があります。
国税庁のサイトで入手できる「相続税の申告のしかた」のような基本的な手引を読んでみて、明らかにこの特例が適用できるようなら、自分で申告してもさほどリスクはないと考えられます。
[blogcard url=https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2019/index.htm]
10ヶ月の期限を意識しよう!
上でご紹介した5つのチェックポイントの中に当てはまれば、自力での相続税申告にチャレンジしてもいいかもしれません。
相続税の申告と納税の期限は、亡くなった日の翌日から10か月。チャレンジすると決めたら、期限を意識してがんばりましょう!
・・・ですが、実際には、相続税申告を自分でやってみようと始めてはみたものの、途中で挫折してしまったという方がたくさんいます。
資料の収集も面倒ですし、申告書を正確に書くのも大変です。時間が取れなかったり、情報を上手く集められなかったりといった理由もあれば、この手の作業が苦手で向いていないという理由もあるでしょう。弊所でも「自分でやろうとしたけど大変すぎて病気になったので頼むことにしました」という経緯で依頼を受けたことがあります。
相続税申告には10ヶ月という期限があります。上手く進まないまま時間が経過してしまうと、申告期限に間に合わないかもしれません。また、税理士に頼むにせよ、申告間近の依頼になるほど税理士報酬が高くなる傾向にあります。