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不動産を売却したら健康保険料が上がるって本当?気になる疑問を解決

「不動産を売却したら次の年の健康保険料が高くなって大変だよ」と聞きました。
今年土地を売ったので、保険料がどのくらい上がるのか心配です。

このような心配をなさる方は少なくありません。
しかし、土地の売却が必ずしも健康保険料に影響を与えるわけではありません。
後で詳しく解説するように、企業にお勤めの方であれば、土地の売却によって保険料が上がることはありません。

この記事では、不動産売却と健康保険料の関係について、どのような場合に保険料があがるのか、具体的な条件や計算方法について解説します。
保険料の上昇を抑える方法についても触れていくので、不動産売却の保険料が気になる方は、ぜひ最後までご覧ください。

この記事を読んで不動産売却後の健康保険料に関する不安を解消していただけると嬉しいです。
それではさっそく見ていきましょう。
目次

不動産の売却で保険料が上がる人、上がらない人

まず大前提として「健康保険料が上がる可能性があるのは、不動産の売却で利益が生じている場合のみ」であることを押さえておきましょう。
不動産の売却による利益のことを譲渡所得といいます。
譲渡所得は以下のように計算します。
譲渡所得 = 譲渡収入金額 ー(取得費 + 譲渡費用)
ここから分かるように「譲渡収入金額>取得費 + 譲渡費用」のとき、譲渡所得はマイナスとなります。
利益ではなく損失が生じている状態です。
譲渡所得がマイナスなら、不動産の売却によって健康保険料が上がることはありません。
いっぽう譲渡益が生じているときは、不動産を売却した人が利用している健康保険の種類によっては、土地の売却が翌年の健康保険料に影響を与えます。
日本には以下のような健康保険制度があります。
  • 健康保険(協会けんぽ、組合保険):民間企業に勤めている人が加入
  • 共済保険:公務員が加入
  • 国民健康保険:健康保険や共済保険の対象とならない自営業者や無職の人が加入
  • 後期高齢者医療保険:75歳以上の人が加入

このうち、不動産の売却で健康保険料が上がるのは国民健康保険か後期高齢者医療保険に加入している場合のみです。

健康保険か共済保険であれば、不動産売却で利益が出ても健康保険料には影響しません。
というのも、健康保険と共済保険では保険料は会社からもらう月額の給与によって決まるからです。
保険料は給与(標準報酬月額)に保険料率を乗じて算定されます。
不動産の売却で利益があっても保険料の算定には関係なく、翌年の保険料が高くなることはありません。

ただし不動産を売却したのが本人ではなく、その扶養家族である場合には、注意が必要です。
健康保険と共済保険には扶養制度があり、本人に生計を維持されている扶養家族の分については保険料を支払う必要ありません。
扶養家族になるにはいくつかの条件がありますが、そのひとつに「年収が130万円未満」というものがあります。
とはいえ土地の売却による収入は一時的な収入に過ぎないため、多くの場合、扶養の判定基準となる年収からは除かれます。
ただし保険組合によっては、不動産の売却収入も含めて年収が130万円以上であれば、扶養から外れるとしているものもあります。
組合の規定によって異なります。保険組合の扶養家族の方が不動産を売却する場合には、利用している組合に確認しましょう。
扶養から外れる場合には、国民健康保険に加入する必要が生じ、国民健康保険料の負担が生じることになります。
また土地の売却によって一時的に扶養から外れた場合でも、翌々年以降、扶養の条件を満たしていれば、扶養に戻ることができます。

国民健康保険料はどのように計算する?

これに対して国民健康保険では、前年の世帯ごとの総所得(基準総所得金額)が保険料に影響します。
この基準総所得金額は、土地の売却による譲渡所得を含むすべての所得をひっくるめた金額です。

国民健康保険での保険料の算定は複雑なのですが、ここでは譲渡所得に関係する部分にしぼって概要を説明します。

国民健康保険料は、

  • 医療分
  • 後期高齢者支援金分
  • 介護保険分
を足し合わせて算定します。うち医療分
  • 所得割
  • 均等割
  • 資産割
  • 平等割
の4つ要素から構成されます。この中で不動産の売却に関連するのは所得割の部分です。
健康保険料の所得割は以下の計算式で算定します。
(「前年の総所得金額」−「基礎控除」)×保険料率
土地の売却により譲渡所得が増えると総所得金額も増えるため、所得割分の分だけ翌年の健康保険料が上がるという仕組みです。
保険料の具体的な上昇額は一概にはいえませんが、一般的に不動産売却の譲渡所得は規模が大きく、所得の増加額も大きいので、それに対応する保険料の値上がり幅も大きくなります。
不動産を売却した翌年の年間の健康保険料が前年に比べて4~50万円増加するケースもめずらしくありません。「売却代金をすべて使ってしまって、保険料を払うお金がない」とならないためには、保険料の上昇にしっかり備えておく必要があります。
ただし国民健康保険料には年89万円という上限が設けられています。仮に不動産売却で多額の利益がでたとしても、保険料が上限以上になることはありません。
後期高齢者保険制度でも、不動産の売却と保険料の関係は同じです。
総所得金額が保険料の算定に関係し、譲渡所得により総所得金額が増えると、所得割が増えて保険料が上がります。
ちなみに介護保険についても触れておくと、40歳以上の方は介護保険料も支払う必要があります。
国民健康保険と後期高齢者保険の介護保険料は所得に応じて決まるため、不動産売却による譲渡所得があると翌年の介護保険料も増加します。

健康保険料の値上げを抑えるには?

このように保険制度の種類によっては不動産売却の際に発生する譲渡所得によって翌年の健康保険料が上がってしまうことがあります。
しかしその場合でも、以下に紹介する方法によってこの値上げを押さえることが可能です。

特別控除の利用

先ほど見たように譲渡所得の算定式は基本的には、
譲渡所得 = 譲渡収入金額 ー(取得費 + 譲渡費用)
ですが、不動産の譲渡所得の計算では、ここからさらに特別控除額を引くことができます。
その場合、
譲渡所得 = 譲渡収入金額 ー(取得費 + 譲渡費用)ー 特別控除額
となります。
不動産の譲渡所得の特別控除には、以下のような大型の控除が用意されています。
  • 自宅を売却した場合の3000万円の控除
  • 相続した親の自宅で空き家となっているものを売却した場合の3000万円の控除
  • 公共事業などのために不動産を売却した場合の5000万円の控除
  • 特定土地区画整理事業などのために土地を売却した場合の2000万円の控除
これらの特別控除を適用すると譲渡所得がゼロになることもよくあります
その場合は国民健康保険や後期高齢者医療保険の加入者であっても、翌年の健康保険料が上がることはありません。
特別控除を適用するには控除ごとに定められた所定の要件を満たしている必要があるほか、確定申告で特別な手続きも必要です。
それでも適用できれば譲渡所得を大幅に引き下げることができ、健康保険料だけでなく所得税や住民税も軽減できます。
土地売却による健康保険料の増加を抑えたいなら、まずはこれらの特別控除を利用できないかチェックしましょう。

経費をしっかり計上する

譲渡所得を減らして健康保険料の増加を抑えるには、譲渡所得の計算で譲渡収入から差し引く費用(取得費と譲渡費用)を漏れなく計上することも有効です。
取得費には売却した不動産の購入代金だけでなく、購入時の登録免許税や登記費用なども計上できます。
相続で不動産を取得した場合、支払った相続税の一部を取得費に計上できる可能性もあります。
譲渡費用も、不動産の売却に要する費用のうち、仲介手数料や印紙税などを計上できます。
取得や譲渡に要した費用であっても計上を認められないものもあります。以下の国税庁のサイトを参照して確認しましょう。
細かい支払いをひとつずつチェックするのは手間ですが、そうすることで健康保険料の上昇を少しでも抑えられます。
また土地については、元々の購入代金が分からないときは概算取得費として売却代金の5%で計算することが認められています。
ただし、この場合、譲渡所得の計算は簡単なのですが、取得費に少額しか計上できないため、本来の譲渡所得よりも大きく算定される可能性があります。
概算取得費を使うと決める前に、取得費を間接的に証明できる書類はないか探してみたり、合理性のある別の推定値を利用できないかぜひ確認してください。
概算取得費を使用する場合よりも、譲渡所得を大幅に引き下げられる場合があります。

まとめ

この記事では不動産売却と健康保険料の関係についてみてきました。
不動産の売却では売却収入から経費を差し引いた譲渡所得がプラスのとき、翌年の健康保険料が上がることがあります。
健康保険料が上がるか上がらないかは健康保険の種類健康保険の種類によって決まります。
国民健康保険や後期高齢者医療保険に加入している方は、譲渡所得を含む所得が保険料に影響する仕組みとなっているおり、譲渡所得の分、翌年の保険料が上昇します。
いっぽう健康保険や共済保険に加入している方であれば、保険料は給与に比例するため、譲渡所得があっても保険料には影響しません。
ただし、組合によっては、扶養家族に譲渡所得があると扶養から外れ、国民保険料の負担が生じることがあります。
健康保険料の値上げを押さえるには、譲渡所得をなるべく削ることが重要です。
不動産の譲渡所得には、譲渡所得を大幅に減らせる特別控除がいくつか用意されています。
また取得費や譲渡費用について認められるものはしっかり計上することによっても譲渡所得を減らせます。
特別控除の適用の可否や算入できる経費を自分で調べるのは大変ですので、税理士に依頼するのもよいでしょう。
この記事が、不動産売却後の健康保険料に関する疑問や不安を解消する一助となれば幸いです。

税理士とくだ
土地売却後の確定申告は弊所でも承っています。
譲渡所得の計算が不安な方はぜひご相談ください。
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