第3回:国際相続って、誰に相談すればいいの?

前回、チェックリストで自分の家が国際相続に当てはまるかを確認した。
当てはまったとして、次に気になるのは「じゃあ誰に相談すればいいのか」だろう。

📌 この記事のポイント
国際相続では複数の専門家が関わる。どんな専門家がいるのか、今のうちに全体像を知っておこう。

普通の相続でも、税理士だけでは完結しない

店内のBGMが静かに次の曲に切り替わった。

「まゆさん、うちが国際相続に当てはまるのはわかりました。で、誰に相談すればいいんですか?」

「その前に一つ確認。華輪クン、普通の相続でも税理士だけで全部完結すると思ってる?」

「え、違うんですか? 相続税の申告は税理士でしょう?」

「相続税の申告は税理士。でも不動産の名義変更は司法書士だし、遺産分割で揉めたら弁護士。
戸籍を集めたり書類を整理したりする部分を行政書士がサポートすることもある。
相続はチーム戦なの。一人の専門家だけで完結する方が少ない」

華輪クンは首をかしげた。

「言われてみればそうか……。で、国際相続だともっと増えるってことですか?」

「そういうこと。普通の相続でも複数の専門家が関わるのに、国際相続ではさらに範囲が広がる」

国際相続では、海外側の専門家が関わることがある

「範囲が広がるって、具体的にどう広がるんですか?」

「大きく言うと、日本の専門家だけでは対応できない部分が出てくるの。
たとえば海外で税務申告が必要になったり、海外の銀行口座を解約するのに現地の手続きが要ったり」

「海外の税務申告? 日本で申告すれば終わりじゃないんですか?」

「日本の相続税の申告は日本の税理士がやる。
でもね、たとえば米国に一定額以上の資産があると、米国側にも申告が必要になることがあるの。その場合は米国の税務専門家に頼むことになる」

「それは日本の税理士じゃダメなんですか」

「日本の税理士は米国の税務申告はできない。国ごとに資格が違うから。
逆もまた然りで、米国の専門家は日本の相続税申告はできない」

「……じゃあうちの父のアメリカの口座、場合によってはアメリカの専門家も要るってことですか?」

「口座があるだけなら要らないことも多い。でも金額や条件によっては米国側の申告が必要になるケースもある。
そのあたりは後の回で整理するわね」

華輪クンは腕を組んだ。

「要するに、日本は日本、海外は海外で、それぞれ専門家がいるってことですか。
……でも、そこまで必要になるケースって実際どのくらいあるんですか?」

「華輪クンの周りでは海外に口座がある家が珍しくないかもしれないけど、ほとんどの人はそういうことを考えたことがない。
だから、実際に相続が起きてから慌てるケースが多いの」

海外の手続きについては、プロベート(裁判所を通じた相続手続き。日本にはない制度)とか、準拠法(どの国の法律で相続を進めるか)とか、聞き慣れない言葉が出てくる。
今は気にしなくて大丈夫。後の回で一つずつ整理するから。

国際相続の専門家マップ
国際相続の専門家マップ
相続はチーム戦。国際相続ではさらに範囲が広がる
税理士
→相続税の申告
(海外財産の評価・外国税額控除を含む)
司法書士
→不動産の相続登記
弁護士
→遺産分割の紛争
→準拠法の判断(渉外相続)
行政書士
→戸籍・身分関係書類の収集
→書類整理
国際相続では、さらに海外側の専門家が関わることがある
現地の税務専門家
→海外での税務申告
(必要な場合)
現地の弁護士
→プロベート等
(裁判所を通じた相続手続き。日本にはない制度)
※すべてのケースで全員が必要になるわけではありません。
自分のケースでどの専門家が必要かは、次回(第4回)で整理します。

今のうちに全体像を知っておけば、いざというとき慌てない

こんなにたくさんの専門家が関わるんですね……。
正直、いざ相続が起きたときに全部調べてたら間に合わない気がする

「だから、今のうちに全体像を知っておくことが大事なの。
どんな専門家がいて、どういう役割があるのか。
それを把握しておくだけで、いざというときの動き方がまるで違う」

「でも、まゆさんに頼めば全部仕切ってくれるんじゃないんですか? 親戚なんだし」

「親戚だからって何でもやれるわけじゃないでしょう。
私は日本の相続税の専門家であって、アメリカの税務申告はできない。
法律の判断が必要なら弁護士の出番だし。
大事なのは、相談した相手が自分の守備範囲をわかっていて、必要なときに他の専門家につないでくれること」

「なるほど……。逆に言うと、守備範囲をわかってない人に頼むと怖いってことですか」

「そう。たとえば、普通の相続しかやったことのない専門家が国際相続を引き受けて、海外に財産があることの意味をよくわからないまま進めてしまう。
華輪クンの家で言えば、お父さんのアメリカの口座を普通の預金と同じように扱って、本当は必要だった手続きや確認を飛ばしてしまう、ということが起こりうるの」

「それは……まずいですね。
じゃあ『相続専門』って書いてあっても、国際相続ができるとは限らないってことですか」

「そういうこと。肩書きだけじゃわからない。しかも、経験がないのに抱え込んでしまう専門家もいる」

華輪クンは少し考えてから言った。

「じゃあどうやって見分ければいいんですか?」

「いい質問。次回はまず自分のケースでどの専門家が必要かを整理して、その後の回で選び方も見ていくわね」

💡まゆさんのひとこと

国際相続では、一人の専門家だけですべてをカバーできるわけではありません。
日本側の専門家と海外側の専門家、それぞれに役割があります。 しかも、同じ「相続専門」という肩書きでも、国際相続に対応できるかどうかは別の話です。
まだ相続が起きていない今の段階で、どんな専門家がいるのかを知っておくこと。それだけで、いざというときの備えになります。
次回は、あなたのケースではどの専門家が必要になるのかを一緒に整理します。
→第4回:国際相続、自分のケースではどの専門家が必要?

免責事項
このシリーズは、国際相続が関係するかもしれない方が、ご自身のケースで何が問題になりうるかを知り、専門家に相談する準備ができるようになることを目的としています。わかりやすさを優先しているため、法令の厳密な表現とは異なる場合があります。記事の内容は一般的な説明であり、個別の税務アドバイスではありません。具体的なご判断は、国際相続に詳しい税理士・弁護士などの専門家にご相談ください。