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第1回:国際相続って、普通の相続と何が違うの?

「国際相続」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
このシリーズは、国際相続が関係するかもしれない方が、まず全体像を掴むための連載です。
📌 この記事のポイント
海外に口座や財産が1つでもあれば、国際相続に当てはまる可能性があります。
海外口座が1つ残っているだけでも「国際相続」になる
多摩川沿いのカフェで、華輪クンがテーブルに着くなり切り出した。
「まゆさん、うちの父のアメリカの口座、あれってどうなるんですか? 相続になったとき」
華輪クンの父は大手企業の駐在員としてアメリカに赴任していた時期がある。
帰国してもう何年も経つが、現地の銀行口座と米国株がなんとなく残っているらしい。
まゆさんは親戚だから、そのあたりの事情はよく知っている。
「あれは国際相続になるわね」
「え、国際相続? うちが? 別に海外に会社があるとかじゃないですよ」
「そこ。国際相続って聞くと、大富豪が複数の国に資産を持っているイメージがあるでしょう。
でも実際は、駐在時代の口座が残っているとか、子どもが留学先でそのまま海外に住んでいるとか、そういうケースの方がずっと多いんだから」
「でもアメリカに口座があるって、そんなに珍しいことですか?
うちがそうだから、わりと普通のことだと思ってたんですけど」
「あなたの”普通”は世間の普通じゃないのよ。
でもねだからといって国際相続が特別な人だけの話かというと、そうでもない。
駐在から戻ってきた家庭なら、口座の一つくらい残っていてもおかしくないでしょう。
そのくらいのことで国際相続に当てはまるの」
華輪クンの父も、会社の辞令でアメリカに行って、帰ってきた。
駐在中に入った保険もそのまま続いている。ただそれだけのことだ。
でも相続が起きると、その「ただそれだけ」が問題になる。

国際相続の当事者って、特別な人だけじゃない。
人生の中で海外がちょっとだけ混ざっている。それだけで、相続の進め方が変わってくるってこと。
実務では、次の4つのうち1つでも当てはまると国際相続として扱います。
※国籍と住所の組み合わせで課税範囲が変わります
→ 1つでも当てはまれば「国際相続」
華輪クンの家はケース③に当てはまります
普通の相続と何が違うのか——「どの国のルールを使うか」という問いが加わる
「4つのケースはわかりました。で、何が大変なんですか?
日本で申告すればいいだけじゃないんですか?」
「日本だけで完結する相続なら、日本の法律と相続税法だけ考えればいいでしょ。
でも国際相続では、最初に『どの国の法律を使うのか』『どの国に税金を申告するのか』という問いが加わる」
「どの国の法律——って、日本に住んでたら日本の法律じゃないんですか?」
「そこは大事なポイントね。
日本では、相続のルールは原則として『亡くなった人の国籍の国の法律』で決まる。住んでいた場所だけで決まるわけじゃなくて」
「え、住所じゃなくて国籍なんですか」
「そう。だから日本人が亡くなった場合は、原則として日本法で相続を進める。
でもね、海外に財産があると、その国にはその国のルールがある。たとえば海外の口座を解約しようとしたら、日本の遺産分割協議書だけでは通らないことがあるの」
華輪クンは腕を組んだ。
「要するに、日本のルールで相続すること自体は決まっていても、海外にある財産を実際に動かすにはその国の手続きも要るってことですか」
「そういうこと。しかも国によっては裁判所の手続きが必要になることもある。
この話は後の回で詳しくやるけれど、まず知っておいてほしいのは、海外に財産があると日本だけでは完結しない、ということ」
しかも日本の相続税は、当事者の「住所」と「国籍」の組み合わせによって、課税される範囲が変わる。
日本にある財産だけが対象になる場合もあれば、世界中の財産が対象になる場合もある。
これが国際相続を複雑にしている最大の理由だ。
ただし、このシリーズでは外国の法律や外国の税制を深追いしない。
軸はあくまで日本の税務。海外の制度は、日本の申告に必要な範囲で触れていく。
「自分が泳ぐ場所」がどこかを知ることから始める
「なんか、途方もない話に聞こえるんですけど……」
「大丈夫。国際相続は確かに範囲が広いけれど、一人の相続人が実際に関係する部分はごく一部。全部を理解する必要はないから」



全部じゃなくていいんですか?
「海全体の地図を覚える必要はない。自分が泳ぐ場所がどこかを知ること。それが最初の一歩」
私はこうした相続を「小さな国際相続」と呼んでいる。
駐在は会社の辞令で行った。
口座は帰国後なんとなく残っている。
子どもが留学や仕事で海外に住んでいる——。
こうした海外要素は、その人が生きてきた結果として残っているもの。
「うちも国際相続に当てはまるのかな?」——まだ相続は起きていなくても、そう感じたときが準備の始まり。
このシリーズは、いずれ来るかもしれないその日のために、今から全体像を掴んでおきたい方に向けて書いている。
「華輪クンのお父さんのケースも、このシリーズの中で少しずつ整理していくから。
まず次回は、自分の家が実際にどのケースに当てはまるのか、チェックリストで確認するところから始めましょう」
国際相続は、海外に会社を持つ資産家だけの話ではありません。
駐在時代の口座、海外の保険、海外に住む家族——人生の中に海外がちょっとだけ混ざっている。
それだけで相続の進め方が変わります。まずは4つのケースのうち、自分に当てはまるものがあるかどうか確認してみてください。
次回は、もう少し具体的に「うちは当てはまるの?」をチェックリストで整理します。
→第2回:うちって国際相続に当てはまるの?チェックしてみたい
免責事項
このシリーズは、国際相続が関係するかもしれない方が、ご自身のケースで何が問題になりうるかを知り、専門家に相談する準備ができるようになることを目的としています。わかりやすさを優先しているため、法令の厳密な表現とは異なる場合があります。記事の内容は一般的な説明であり、個別の税務アドバイスではありません。具体的なご判断は、国際相続に詳しい税理士・弁護士などの専門家にご相談ください。
