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残高証明書に「休眠預金等移管金」——相続手続きで知っておきたいこと

先日、ある相続案件で残高証明書を取り寄せたところ、「休眠預金等移管金」という見慣れない項目が記載されていました。
金額はごく少額。ご遺族の誰も、この口座の存在を知りませんでした。
今回は少額だったので実害はありませんでしたが、もしこれが数十万円だったら——。 そう考えると、この仕組みは知っておく価値があると思いました。
休眠預金とは
長期間、入出金などの取引がない預金は「休眠預金」として扱われます。
10年以上取引がない一定の預金等は、休眠預金等活用法に基づき預金保険機構に移管されます。
移管された資金は民間の公益活動に活用される仕組みになっています。

移管って、預金が没収されてしまうんですか?



いいえ、没収ではありません。
元の金融機関に申し出れば、後からでも払い戻しを受けることができますよ。



じゃあ、父の預金もちゃんと取り戻せるんですね。



はい。ただ、相続の場合は少し手続きに時間がかかることがあります。
相続ではどんな場面で出てくる?
休眠預金は、相続手続きの途中で見つかることが少なくありません。 よくあるのは、次のようなケースです。
- 残高証明書を取り寄せたら「休眠預金等移管金」と書いてあった (冒頭で紹介した私の体験もこのケースです)
- 遺品整理で古い通帳が見つかり、銀行に問い合わせたら休眠預金になっていた
いずれも、家族が存在を知らなかった口座が相続手続きの途中で見つかるパターンです。
相続税ではどう扱うか
休眠預金であっても、相続財産として課税対象になります。
ただし、実際に残高証明書を取り寄せてみると、少し戸惑う記載になっていることがあります。
今回のケースでは、残高証明書の金額合計は 0円 でした。 銀行としては、すでに資金が移管されているため、自行の預金としては存在しないという扱いです。
ただし「以下ご参考」として、休眠預金等移管金の金額 が別途記載されていました。



残高がゼロなら、申告しなくていいんじゃないですか?



いいえ、「ご参考」に金額が載っている以上、そこに財産が存在していると考える必要があります。



でも、銀行の預金じゃないんですよね?
そこがまさにポイントで、法律上はすでに「預金」ではなくなっています。
つまり、残高証明書の本体は 0円、でも「ご参考」に 金額がある——この状態を、相続税の申告書にどう落とし込むかが問題になります。
法的には「預金」ではなくなっている
休眠預金制度では、資金が移管された時点で元の預金債権は消滅し、 代わりに 「休眠預金等代替金」 の支払いを請求できる権利が発生します。
つまり、法律上は 預金ではなく「お金を請求できる権利(金銭債権)」 という扱いになります。
ただし、この財産を相続税の申告書にどう記載するかについて、 国税庁が明確なルールを示しているわけではありません。
申告書のどこに書くか——2つの考え方
実務上は、次の2つの考え方があります。
法令ベースの整理
預金ではなく「金銭債権」と考え、 相続税の申告書では 「その他の財産」 として記載する方法です。
実務合理性の整理
元の銀行口座との関係が分かるよう、 預貯金の欄に記載する方法 です。
どちらの立場にも合理性があり、現時点では「これが正解」と断定できる根拠はありません。
私個人としては法令ベースの整理のほうが筋が通っていると感じていますが、預貯金の欄で処理したとしても、それだけで問題になるとは考えにくいでしょう。
いずれの場合も、「休眠預金等代替金」であることや、元の金融機関名など財産の由来が分かる情報を申告書に記載しておくと整理しやすくなります。
評価額は残高証明書の金額でよいか
ここで注意したいのが、残高証明書の「ご参考」に記載された計算基準日です。
実務では、この計算基準日と相続開始日がずれていることがあります。 場合によっては、1年以上差があることもあります。
相続税では、財産は 相続開始日時点の価額 で評価するのが原則です。
今回のように少額であれば、このズレによる差額はごくわずかです。 実務上は、残高証明書の金額をそのまま使っても問題になるケースはほとんどありません。
ただし、金額が大きい場合には、 金融機関に 相続開始日時点の代替金の額 を確認したほうが安心です。
「計上しない」ことのリスク
残高証明書の本体が「0円」だからといって、 「ご参考」の記載を無視して申告しないのは避けるべきです。
少額であっても、後から名寄せなどで把握された場合、 「計上漏れ」と指摘される可能性があります。
むしろ、「ご参考」の情報を拾い上げて計上していること自体が、 丁寧な申告姿勢として評価されるはずです。
払い戻しの手続き
法律上の仕組みとしては少しややこしい話があって、 移管された時点で元の預金債権は消滅し、「休眠預金等代替金」という別の請求権に変わっています。
ただ、相続人から見れば手続き先は 元の金融機関の窓口 ですので、見た目は通常の相続手続きとあまり変わりません。
必要書類も基本的には同じです。戸籍一式、遺産分割協議書、印鑑証明書など。
ただし、いくつか注意点があります。
ひとつは、名義変更(口座の承継)ができないこと です。
休眠預金は口座として復活するわけではないため、基本的には払い戻し(現金化)の手続きになります。
もうひとつは、時間がかかる可能性があることです。
金融機関内で口座の調査が必要になるため、通常の預金解約よりも処理に時間を要するケースがあります。
相続税の申告期限は 10か月 です。
休眠預金の存在がわかったら、早めに金融機関へ問い合わせることをおすすめします。
残高証明書に見慣れない記載があると不安になりますが、 仕組みを知っていれば落ち着いて対応できます。
ただし、休眠預金の相続税上の取り扱いは、まだ実務上のルールが固まっていない部分があります。金額や状況によって判断が変わる可能性もあります。



迷ったときは相続に詳しい専門家にご相談ください。
