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「AIで確定申告、税理士いらない」は本当?
今年の確定申告シーズン、SNSでこんなポストをたくさん見かけました。
「AIで確定申告書が簡単に作れた、もう税理士いらない」
すごい時代になったなと思います。
私自身もAIは日常的に使っていますし、便利さは実感しています。
ご自身で調べて、ご自身で申告する。それは全く問題ありません。
確定申告はもともと自分で行うものですから。
ただ、一つだけ。作れたことと、合っていることは別の話です。
もっともらしさの落とし穴
AIに税務の質問をすると、とてもしっかりした回答が返ってきます。
条文番号が引用されていたり、通達まで出てきたりすると、「なるほど、これで間違いない」と安心してしまいます。
でも、よく見ると番号が微妙に違っていたり、引用元の趣旨とずれた解釈になっていることがあります。
もっともらしいからこそ、間違いに気づきにくい。これが怖いところです。
最近はAIで調べた結論の確認だけを求められることが増えました。
ときどきその回答の答え合わせ係にされそうになります。
AI自身、チャット画面の下に「AIだから間違うこともあります。回答内容は必ず確認してください」と書いてあります。
AI自らそう言っているわけです。で、その「確認」の矛先が私たち専門家に向かってくる。
でも、その確認が難しいんです。
別のAIで裏を取ることはできても、それはお墨付きにはなりません。
「大丈夫です」と責任を持って言えるのは、やはり人間の専門家だけです。
答えは聞き方で変わる
これはAIに限った話ではありません。
以前、ある案件で税務署に確認すべき論点が出てきたので、「一緒に行きましょう」とお伝えしていたことがありました。
ところがその方、ご自分で税務署にお電話されて、ご自分に有利な情報だけを伝えて回答をもらってきてしまいました。
別の税理士の無料相談でも同じことをされて、「ほら、みんなこう言ってます」と。
悪気はなかったんだと思います。
でも、前提が偏っていれば、答えも偏ります。税務署も税理士も、聞かれた前提に基づいて答えますから。
AIも同じです。聞きたい答えを引き出すのは、実はとても簡単です。
知らないことは聞けない
もう一つ、こちらの方が大事かもしれません。
AIに的確な質問をするには、その分野の基本的な知識が要ります。
何が論点になるのか、どの事実が結論を左右するのかが見えていないと、そもそも何を聞けばいいか分かりません。
一つ質問して、もっともらしい答えが返ってくる。「なるほど」と思って、それで終わり。
でも本当は、聞くべき論点があと3つも4つも残っていた——ということが起こり得ます。
知らないことは聞けない。これはどうしようもないことです。
「私の申告は簡単です」とおっしゃる方ほど、蓋を開けると論点が山のように出てくることがあります。
簡単かどうかを判断すること自体に、実は専門知識が必要なんです。
判断を委ねるなら
AIは、判断の責任を取ってはくれません。
「AIがこう言っていました」は、税務調査では通用しません。
私たち税理士は、判断の結果に責任を負っています。
だから慎重に考えますし、リスクも見逃さないように注意を払います。
AIは税理士にとっても便利なツールですが、税理士は専門知識があるからこそ、その回答のどこが合っていてどこが怪しいか見極めることができます。
AIの利用に否定的なわけではありません。どんどん使ってみてください。
ご自身の状況を整理したり、何が問題になりそうかの当たりをつけるには本当に便利です。
ただ、AIが出した答えをそのまま自分の申告にしていいかどうか。その判断はAIにはできませんし、その結果に責任を負うのはAIではなく、ご自身です
もちろん、簡単な申告ならAIで十分というケースもあるでしょう。
ただ、ご自身の申告が簡単かどうかの判断からして、実はけっこう難しかったりします。
「AIで確定申告、税理士いらない」。その判断はまだ、少し早いかもしれません。
