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押さえるべし!遺言書作成の具体的な流れ

相続遺言相談室 on the web

遺言書作成の流れは?
 
きちんとした遺言書を作るのにおすすめの手順があれば、教えてください。

遺言書はただ思いのままに書けばよいというわけではなく、ペンを取る前に検討すべき事項がいろいろあります。

何も準備のないまま遺言書を書くと、残念な結果になってしまいがち。

とはいえ、準備と言われても具体的に何をしていいか、いまいちはっきりしませんね。

そこで、今回の記事では、必要な検討を漏らさないためにおすすめのフローを紹介します。

これに沿って進めれば、遺言書の失敗を確実に減らすことができますよ。

目次

相続対策における遺言書作成の位置づけ

遺言書の作成は、それ単独で存在するわけではなく、一連の相続対策を構成するステップの一つです。

まず、相続対策における遺言書の作成の位置づけについて確認しておきましょう。

やるべきこと 具体的な手段と順番
1. 財産の把握 1-1.財産目録を作成
2. 財産の整理 2-1.必要な財産と不要な財産に整理する

2-2.必要な財産は自分で使う財産と家族へ遺す財産へと分ける

2-3. 家族と話し合う
3.財産の移転 3-1.生命保険に加入する

3-2. 財産を贈与する

3-3. 遺言書を作成する
3-4. 家族に想いを伝える

これについては以前記事にしました。

[blogcard url=https://papillon-support.com/avoid-failure/]

ここで取り上げるのは、上の表の「3-3. 遺言書を作成する」です。

このステップも更に細かいステップに分かれます。それらのスモールステップについて見ていきます。

MEMO

以下の話しの前提として、

・法定相続人の確認
・財産目録の作成

はすでに終わっているものとします。つまり、分割を検討する財産と財産を相続する権利のある人を遺言者自身がしっかり把握できているという状態です。

もしまだであれば、これをすませてから、遺言書の作成ステップに入ってくださいね。

遺言書作成の具体的な流れ

一般の人が自分で遺言書を書く場合、以下の流れに沿って進めることで、必要な検討を漏らさずカバーし、失敗のリスクが少ない遺言書を仕上げることができます。

3-3-1 誰に何を渡したいか、まずは思いのままに書いてみる
3-3-2 相続税の問題を検討する
3-3-3 遺留分を侵害していないか確認する
3-3-4 寄附先の受入体制について確認する
3-3-5 遺言書の内容を再度吟味する
3-3-6 遺言執行者を検討し、必要に応じて選任・依頼する
3-3-7 付言を検討する
3-3-8 執筆に必要なものを準備する
3-3-9 遺言書を書く

なんと全部で9ステップもありますね。

実際に遺言書を書くまでにこんなにすることがあるのか、意外に面倒だなと思われたかもしれません。

寄附や遺言執行者、付言についてのステップは人によって不要な場合もありますが、それ以外はすべて欠かせないステップです。

手順に沿って慎重に着実に進めていきましょう。

誰に何を渡したいか、まずは素直な思いを書く

財産目録を見ながら、どの財産を誰にあげたいか、まずは思いのままに書きだしてみましょう。

財産目録の横にそれをあげたい人の名前を書きだしてもいいですし、家や通帳を写真に取って、それを机に広げてじっくり検討するという人もいます。

この段階では自分の素直な思いを分割案としてまとめられれば十分です。

相続税の問題を検討する

自分の相続で相続税がかかりそうか、確認します。

具体的には、基礎控除額を超えそうかどうかを検討しましょう。

相続税の基礎控除額=3,000万円+法定相続人×600万円

検討の結果、基礎控除額を超えていなければ、相続税の問題はこれ以上心配不要です。

基礎控除額を超えていれば、相続税がいくらかかりそうか、シミュレーションします。

主に相続税の節税対策納税対策のためです。

このままでは多額の相続税がかかってしまうのであれば、相続税の特例を適用できるような分け方を考えてみたり、場合によっては生前贈与なので財産を減らすこともできます。

また、相続税は現金一括払いが原則なのですが、不動産や株式を相続した人が相続税を支払う現金を用意できず困ってしまうことがあります。

そうならないように、遺言で財産の分け方を指定する段階で、預金も一緒に渡してあげるといった配慮が必要です。

遺留分を侵害していないか確認する

自分の素直な気持ちに従った分け方が、遺留分を侵害する結果になっていないか検討します。

やむを得ない事情で遺留分を侵害した遺言書にする場合は、多めに財産をもらう人が遺留分侵害額請求をされたときに遺留分を払えるかどうか確認します。

懸念があるようなら、生命保険に加入して、死亡保険金の形で必要な現金を用意できるように配慮しておきましょう。

寄附先の受入体制について確認する

寄附をしたい人限定で必要なステップです。

いくら遺言書に寄附すると書いても、寄附先に受入体制がなければ、寄附はできません。

善意の寄附を拒否されるのはショックですね。

でも、現実問題として、遺留分を侵害しているような寄附や山林のような処分に困る財産は「貰っても困る」として受入を拒否されることはよくあります。

そうならないように、遺言書を作成する段階で、寄附先に問い合わせて確認しておきましょう。

遺言書の内容を再度吟味する

これまでのステップで行った検討を踏まえて、遺言書に書く内容を再度吟味します。

税金や遺留分、寄附先の問題を検討した結果、自分の素直な気持ちによる当初案から変更が生じているかもしれません。

もう一度自分の思いに立ち返ってみます。大幅にズレているようなら、本当にそれでいいのかじっくり考えます。

各方面に配慮した遺言書を書くのは大事なことですが、そのせいで自分の思いとはかけ離れた内容になってしまっては本末転倒です。

バランスを図って自分自身が納得できる内容に仕上げてください。

ここまでのステップで遺言書の本文に書くことは決まりました。

遺言執行者を検討し、必要に応じて選任・依頼する

遺言の内容を実現してくれる人を遺言執行者といいます。

遺言執行者を付ける場合は、遺言書を書く段階で候補となる人の承諾を得ておくと安心です。

承諾なしに遺言書の中で指定しただけだと、いざ相続が起きた段階で断られてしまう危険があります。

付言を検討する

付言は遺言書の本文に続いて書かれるメッセージの部分です。

付言に法的効力はありませんが、遺言書本文の内容について遺言者の考えを書くことで、相続人に誤解が生じにくくなる、納得しやすくなるなどの効果が期待できます。

遺言書を効果的なものにするために、付言を上手く利用することを考えましょう。

MEMO

ただし、付言に文言を盛り込みすぎるのはやめましょう。
特に自筆証書遺言の場合はそうです。
分量が多いと書くだけで一苦労です。
単なるメッセージであれば、エンディングノートのようなノートを使うほうが得策です。

執筆に必要なものを準備する

遺言書の作成に必要なグッズを用意します。

  • 筆記用具
    消えないボールペン、万年筆など、お好みのものを。
  • 用紙、封筒
    自筆証書遺言保管制度で遺言書を預ける場合は、封筒は不要ですが、用紙及び様式を確認しましょう。
    市販の遺言書キットのようなものを利用してもいいでしょう(Amazonや本屋さんで買えます)
  • 印鑑、朱肉
    認印でも法的に有効ですが、できれば実印がいいです。

グッズにこだわってみるのも楽しいですよ^^

遺言書を書く

いよいよ執筆です。

集中できる場所と時間を選んで書いてみましょう。

気持ちの晴れやかなときがいいですね。

MEMO

自筆証書遺言は「手書きでなければ無効」という点にくれぐれも注意してください。
パソコンでの作成が認められているのは遺言書に添付する財産目録のみ。本文は必ず自分の肉筆で書きます。

まとめ

今回の記事では、遺言書の作成における具体的な流れをご紹介しました。

遺言書の作成で大切なことの一つに「必要な検討を漏らさず行うこと」があります。

そのためには、いきなりペンを取って書き始めるのではなく、ご紹介したようなステップを踏んでから書き始めるのが安全です。

公正証書ではなく自筆証書で遺言を書く場合、法務局の遺言保管制度を利用するのであれば、遺言書の法的な有効性についてはチェックをしてもらえます。

でも、税金や遺留分侵害といった内容面での検討はノーチェックですので、別途自分でなんとかする必要があります。

 


今回の記事を参考に、遺言書作成のステップを辿りながら検討してみてください。
 

MEMO

ご紹介した遺言書作成の流れは、山田和美『「きちんとした、もめない遺言書」の書き方・のこし方』日本実業出版社、2018を下地に書きました。

遺言書の執筆を最終目的とした遺言書の作成フローについて説明してある本は意外にめずらしいです。

本書では、行政書士とCFPの資格を持つ著者が遺言書の作成フローについて詳しく解説しています。

本書の序盤において、著者は「長年相続の現場に携わる中でまったく問題のない自筆証書遺言を見たことは、誇張ではなく一度もない」と述べて、安易に自筆証書遺言を作ってしまう危険性について警鐘を鳴らしています。

人によっては耳が痛い話しかもしれませんが、死後に発覚する遺言書の失敗は、取り返しのつかない失敗です。

念には念を入れて作りたいと思ったら、ぜひ本書を手に取ってみてください。

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