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不動産売却の税金は医療費控除で減らせる?仕組みと注意点をわかりやすく解説

家を売ったら思った以上に税金がかかるみたいでショック…
医療費をたくさん支払った年だから、医療費控除で少しは安くならないかな?
不動産の売却は、人生のなかでそう何度も経験するものではありません。だからこそ、税金について正しく理解していないと「払わなくてもよかった税金」を余分に払ってしまうこともあります。
ときどきいただくご相談に、「医療費控除を使えば、不動産の売却益にかかる税金も安くなるのでは?」というものがあります。実は、仕組み上そうなる場合もありますが、誰にでも当てはまるわけではありません。
結論から述べると、医療費控除が不動産の売却益にかかる税金を直接大きく減らすことはありません。
医療費控除はまず給与や年金など総合課税の所得から差し引かれますが、そこで控除しきれない分があれば、分離課税の譲渡所得からも差し引かれる仕組みです。そのため、条件によっては譲渡所得にかかる税額が軽くなることもあります。
ただし、こうしたケースはむしろ例外的で、実際に不動産の税負担を大きく減らす力を持つのは、医療費控除ではなく、不動産売却のために用意された「3,000万円特別控除」や「軽減税率」などの特例制度です。
この記事では、
- 譲渡所得と税金の基本
- 医療費控除が影響するケース/しないケース
- 実際に効果が大きい特例制度
- 将来を見据えた注意点と専門家の役割
を、できるだけ分かりやすく整理します。
家を売ったら税金がかかる?まず知っておきたい基本

この前、父の家を売ったんですけど…かなり税金がかかるって聞いて不安で



不動産を売った時にかかるのは“譲渡所得税”といって、普通の給料や年金の税金とは別のルールで計算するんですよ。
📊 譲渡所得の計算式
売却価格- 取得費(買ったときの値段)- 譲渡費用(仲介手数料など)= 譲渡所得(利益)
不動産の売却で得られた利益は、給与や年金などと同じ「総合課税」ではなく、独立した計算枠=申告分離課税で処理されます。
これは、金額が大きくなることが多い不動産の取引を、他の所得と一緒に計算すると税率が不自然に跳ね上がってしまうため、特別に切り離して公平に課税する仕組みです。
医療費控除で不動産の税金は減らせるの?



ちょうど去年は母の入院で医療費がたくさんかかりました。医療費控除って、不動産の税金にも使えるんですか?



医療費控除は直接、不動産の譲渡所得から控除できるわけではありません。ただし仕組み上、“総合課税の所得から引ききれなかった控除が、分離課税の課税所得に回り込む”ことはあります
医療費控除は、不動産の売却に特化した制度ではなく、あくまで1年間にかかった医療費を考慮して税負担を軽くするための一般的な仕組みです。
通常は給与や年金といった「総合課税」の所得から差し引かれますが、控除額がそれでも余るほど大きい場合には、最終的な課税計算の中で分離課税の所得(不動産の譲渡所得)にも反映されることがあります。
言い換えれば、医療費控除が直接「譲渡所得そのものを減らす」わけではなく、全体の課税所得から順番に差し引いていった結果として、譲渡所得にまで影響が及ぶケースがあるということです。
💡 医療費控除の基本
- ・1年間に支払った医療費が大きいときに使える
- ・給与や年金など「総合課税」の所得から差し引く
- ・総合課税で控除しきれない場合、その余りが「分離課税(不動産の譲渡所得)」に影響することがある
どんなときに効果がある?シンプルな例で確認
例を見てみましょう。
- 不動産を売って 譲渡益500万円 が出た
- 医療費控除の対象が 200万円
この場合、課税される所得が大きく減るため、譲渡所得にかかる税金も結果的に軽くなる可能性があります。
⚖️ 効果の出方を比較
ケース | 節税効果 | ポイント |
---|---|---|
医療費が多く、ほかの所得が少ない | 効果あり | 控除しきれなかった分が譲渡所得に回る |
給与や年金収入が多い | 効果なし | 医療費控除は総合課税で使い切ってしまう |



なるほど…つまり“医療費がすごく多い年に売った人”じゃないとあまり関係ないってことですね



その通りです。医療費控除での節税は“例外的に効くケース”と考えてください
🖼 図解イメージ(控除の流れ)
総合課税の所得 ──▶ 医療費控除
│
▼
控除しきれなかった分 ──▶ 分離課税(不動産譲渡)
実際に役立つのは「特例」のほうが多い
医療費控除は、入院や治療などで出費がかさんだときに、家計の負担を少しでも軽くするための「一般的な控除制度」です。まず給与や年金といった総合課税の所得から差し引かれ、余りがあれば譲渡所得に回ることもありますが、これはあくまで例外的な場面に限られます。
不動産の税金を本当に大きく減らしたいなら、医療費控除よりも不動産売却に特化した特例制度を確認することが現実的で、効果も大きいです。
📌 不動産売却でよく使われる特例(2025/4/1改正)
- 居住用財産の3,000万円特別控除(自宅を売却したときに最大3,000万円まで非課税にできる)
- 長期譲渡所得の軽減税率(5年以上所有した家なら、通常より低い税率で計算される)
- 住み替えや買換えの特例(条件を満たせば損益を繰り延べできる)
これらの制度は適用できれば税額に直結して効くため、実際の節税効果は医療費控除とは比べものになりません。



3,000万円も控除できるなら、医療費控除よりずっと効果が大きいですね!



そのとおり。不動産売却の節税は“特例が主役”、医療費控除は補助的な役割なんです
まとめ:不動産売却の節税で医療費控除はあくまで補助的に考えよう
不動産を売却したときに「医療費控除で税金が減る」というのは、仕組み上まったくの誤りではありませんが、実際に効果が出るのは医療費が非常に多く、給与や年金など総合課税の所得で控除しきれなかった場合に限られるという、かなり限定的なケースです。
一方で、不動産の譲渡所得については、最初から売却時の税負担を調整するための強力な特例が用意されています。たとえば「3,000万円特別控除」や「軽減税率の特例」は、適用できれば数百万単位で税額が変わることも珍しくありません。現実的に多くの方が使い、効果を実感しているのはこちらの制度です。
医療費控除は「不動産売却に伴う税負担を軽くするための仕組み」ではなく、あくまで日常生活における医療費の負担を和らげるための制度です。
医療費控除は最初は給与や年金などの総合課税の所得から控除されます。その控除額が総合課税の所得を上回ると、余った部分が申告分離課税である譲渡所得から差し引かれることになります。つまり、所得控除の金額と各所得のバランスによって、結果的に譲渡所得から控除できる場合があるという仕組みです。
高齢化社会の中で、医療費や不動産売却は多くの家庭が直面するテーマです。税金を少しでも減らす方法を知っておくことは“家計を守る知恵”です。ただし制度は複雑で、間違えると余計な税金を払ってしまうリスクもあります。税理士に相談すれば、安心して正しい申告ができます。