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相続税は、なぜこんなに複雑なのか

相続税のことを調べ始めると、制度の複雑さに驚くかもしれません。
基礎控除、財産評価、小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減、生前贈与、名義預金――。ひとつ調べると、また知らない言葉が出てきます。
「どうして、こんなに難しくするのだろう」と思うのも無理はありません。
けれど、この複雑さには、少し意外な理由があります。
配慮しようとすると、税制は複雑になります
たとえば、亡くなった方と一緒に暮らしていた自宅を相続した人と、投資目的の土地を相続した人を、まったく同じように扱ってよいのでしょうか。長く続けてきた事業を引き継ぐ人に、相続税を納めるために事業用の財産を手放してもらうのがよいのでしょうか。配偶者を亡くした人の、その後の生活はどうでしょう。
事情の違う人をできるだけ公平に扱い、生活や事業にも配慮しようとすると、特例がつくられます。特例を公平に適用するためには要件が必要になり、制度の趣旨とは違う使われ方を防ぐためのルールも必要になります。
そうして配慮を一つ重ねるたびに、税制は少しずつ複雑になっていきます。
もちろん、税制は簡素であるに越したことはありません。ただ、複雑さのすべてが、無意味な複雑さというわけではないのです。
ところが、配慮を受け取るためにも「仕事」が要ります
せっかく相続人のために用意された制度でも、その配慮は、ひとりでに届くわけではありません。
制度があることを知る。
自分が対象になるかを確認する。
要件を満たしているかを調べる。
必要な資料をそろえる。
そして、適切に申告する。
そういう一連の「仕事」を経て、はじめて受け取れるものです。制度が細やかになるほど、この仕事は難しくなります。
相続人への配慮が制度を複雑にし、その複雑さのために、今度は配慮を受け取ること自体が難しくなる。
制度の複雑さを、そのまま相続人に手渡さない
相続が始まった人には、税金以外にもたくさんのことがあります。財産を確認し、親族と話し合い、銀行や役所の手続きをし、これからのことも考えなければなりません。それは、大切な人を亡くした後に始まります。
そこへ、複雑な税制まで丸ごと手渡す必要があるでしょうか。
私は、ここに税理士の仕事があると思っています。
その方に関係する制度を探し、適用できるかを確認し、必要な事実や資料を調べ、税務上の判断をする。
そのうえで、相続人ご本人に知っていただきたいことを整理して、わかる形にしてお伝えする。
相続人への配慮として用意された制度なら、その配慮を、受け取れる形にして手渡す。それも、相続税を扱う税理士の役割だと考えています。
相続人にしかできないことのために
税理士が、相続そのものを代わりに引き受けることはできません。誰が何を受け継ぐのか。家族として何を大切にするのか。これからどうしていくのか。相続人ご本人にしか考えられないことがあります。
だからこそ、専門家が引き受けられる複雑さは、専門家が引き受ける。そうして、ご本人にしかできないことのための余力を残したい。
それは、相続税の仕事をする税理士として、私が大切にしていることです。
税制は複雑でも、相続する人の時間まで複雑である必要はありません。
