非上場株式の確定申告はこう違う!上場株式との比較で理解するポイント

「親族の会社の株を持っているけど、売却したら確定申告が必要になるの?」
「非上場株式を売ったり配当をもらったら、税金はどうなるの?」

上場株式は情報が豊富ですが、非上場株式は誤解されやすい分野です。この記事では、税理士の視点から非上場株式の確定申告ルールを分かりやすく整理して解説します。

目次

非上場株式とは?

非上場株式とは、証券取引所で取引されていない株式のこと。中小企業や同族会社の株が典型です。市場価格がなく、売却先も限られるため、税務上の扱いに特徴があります。

非上場株式の税務申告って、上場株式とどう違うんですか?

市場で値段がつかない株なので、評価や課税方式が上場株より複雑です。そのため注意点が多いんですよ。

売却した場合の課税関係

所得区分と課税方式

非上場株式の売却益は「譲渡所得」に区分され、一般株式等として「申告分離課税」(税率20.315%=所得税・復興税15.315%+住民税5%)が適用されます。

損益通算

損益通算は「一般株式等」同士でのみ可能です。上場株式等との通算はできません【国税庁 No.1465】。

売却損が出たら、上場株の利益と相殺できませんか?

残念ながらできません。非上場株式(一般株式等)の損失は、同じ区分内だけで通算可能です。

損失の繰越控除

原則として、非上場株式の損失は翌年以降に繰り越せません。

ただし例外があります。特定中小会社への払込み取得株式を一定期間内に譲渡して生じた損失(エンジェル税制)は、要件を満たせば上場株式等との通算や3年間の繰越控除が可能です【国税庁 No.1465】。

配当を受けた場合の課税関係

原則:総合課税+配当控除

非上場株式の配当は「配当所得」として総合課税に含めて申告します。給与や事業所得と合算され、累進課税の対象になります。申告すれば「配当控除(10%または5%)」を利用できます。

父の会社から配当を受けたけど、源泉徴収されているから申告しなくてもいいですよね?

原則は申告が必要です。非上場株式の配当は総合課税として確定申告するのが基本です。

例外:少額配当

ただし例外があります。1回の支払額が10万円×配当計算期間の月数÷12以下の配当は、所得税に限って「申告不要」を選択できます。

少額なら申告しなくてもいいんですか?

そうです。ただし注意点があります。住民税は必ず申告が必要で、他の所得と合算(総合課税)されます。つまり“所得税は不要でも住民税は必要”という仕組みなんです。

実務上の注意点

評価額に注意

非上場株式は市場価格がないため、売却価額の根拠が重要です。親族間で不自然に安く譲渡すると「贈与」と判断されることがあります。安全のため、株価算定書を準備しておくと安心です。

給与所得者の20万円ルール

給与所得者は、給与・退職所得以外の所得が20万円以下なら所得税の確定申告は不要になることがあります。ただし住民税は別途申告が必要です。

上場株式と非上場株式の比較

項目上場株式等非上場株式(一般株式等)
売却益の課税譲渡所得(申告分離課税20.315%)譲渡所得(申告分離課税20.315%)
損益通算上場株式等同士で可一般株式等同士で可(上場株式等とは不可)
損失の繰越控除3年繰越可原則不可
配当の課税方式申告不要・申告分離・総合課税から選択原則総合課税(配当控除あり)/少額配当は所得税で申告不要可※住民税は必ず申告
住民税の扱い申告不要可(分離課税選択可)総合課税のみ(少額配当も申告要)
評価方法市場価格あり市場価格なし(売買実例・評価方式を参照)

まとめ

非上場株式の取扱いは、上場株式とは大きく異なります。

  • 売却益は「一般株式等」として申告分離課税(20.315%)。
    損益通算は同じ一般株式等に限られ、上場株式等との通算はできません。
    原則として損失の繰越控除もできません。
  • 配当は原則総合課税で、確定申告が必要です。配当控除の適用により二重課税は調整されます。
    例外的に「少額配当」は所得税でのみ申告不要を選択できますが、住民税では必ず申告して総合課税に合算されます。
  • 給与所得者には「20万円ルール」があり、給与以外の所得が20万円以下なら所得税の確定申告は不要となる場合があります。
    ただし住民税については別途申告が必要な点に注意が必要です。

このように、非上場株式は「売却」「配当」「損失の扱い」など、すべてにおいて上場株式と制度が異なります。知らずに放置すると申告漏れや課税ミスにつながり、余計な税負担や調査リスクを抱えることになりかねません。

非上場株式って、やっぱり上場株と全然違うんですね。

その通りです。非上場株式は上場株式と比べてルールが違う点が多いんです。売却や配当の取扱いを正しく理解しないと、申告漏れや税務調査のリスクにつながります。迷うときは税理士に相談してくださいね。

参考資料

  • タックスアンサー No.1463「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」
  • タックスアンサー No.1465「株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い」
  • タックスアンサー No.1330「配当金を受け取ったとき(配当所得)」
  • タックスアンサー No.1250「配当所得があるとき(配当控除)」
  • タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」
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