面談予約専用ダイヤル044-712-0945
(電話受付:平日午前9時~午後6時)
四十九日と、十か月

相続が始まると、いくつもの時計が動き始める
相続が始まると、期限の多さに驚くかもしれません。
3か月以内、4か月以内、10か月以内。役所の手続き、銀行の手続き、年金の手続き。それぞれに期限や順序があり、整理する間もなく、波のように押し寄せてきます。
気持ちはまだ、あの日から動けずにいるのに。
なぜ、こんなに慌ただしいのでしょうか。
それは、相続が始まったとき、相続人のまわりで、刻み方の違う時計がいくつも同時に動き始めるからです。
法の時計――厳格だけれど、無慈悲ではない
一つは、法の時計です。
相続放棄は原則として3か月以内。亡くなった方の所得税の申告は4か月以内。相続税の申告は10か月以内。
それぞれ違う期限をもった時計が、同時に動き始めます。
この時計は、厳格です。
気持ちの整理がついていなくても、一日ずつ、一定の速さで進んでいきます。
人の悲しみや迷いとは別のところで、法の時間は刻まれていきます。
ただ、相続税の申告期限である10か月は、決して何もしないまま待つための時間ではありません。
財産を、プラスのものもマイナスのものも含めて洗い出し、確かめるには時間がかかります。
土地や株式などの財産を評価するにも時間がかかります。
そして、誰が何を受け継ぐのかをご家族で話し合って決めるにも、時間がかかります。
そう考えると、10か月という時間は、決して長すぎるものではありません。
実際、この期限は、はじめから10か月だったわけではありません。
かつては6か月だった申告期限が、土地の評価方法が大きく見直された平成4年の税制改正で、10か月へと延長されました。
評価や申告準備には、それだけの時間が必要になる。
制度の側も、その実情を無視してきたわけではないのです。
法の時計は厳格ですが、無慈悲ではありません。
儀礼の時計――四十九日、お盆、一周忌
もう一つは、儀礼の時計です。
初七日、四十九日、お盆、一周忌。
こちらは、期限ではなく、祈りと集まりによって刻まれる時計です。
考えてみれば、喪にも昔からカレンダーがありました。
深い悲しみをそのまま抱えきれないからこそ、人は長い時間をかけて、悲しみに区切りと形を与える暦をつくってきたのだと思います。
心の時計――進んだり、戻ったり、止まったり
そして、心の時計があります。
進んだり、戻ったり、ある日ふいに止まったりする時計です。
何をすればよいのかわからなくなったり、考えようとしても頭が真っ白になったりすることもあります。
悲しみの中で進む時間は、いつも同じ速さではありません。
この三つの時計は、速さも、刻み方も違います。
だから、ずれるのが当たり前です。
四十九日をひとつの区切りとして、それから相続の手続きを考え始める方もいらっしゃいます。
一方で、申告期限にはまだ余裕があっても、「最初のお盆までに申告を終えたい」と希望される方もいます。
はじめて還ってくる故人に、無事に終わりましたと報告したいから――。
そういう方にとって、相続税の申告は、単なる税務手続きではありません。
ひとつの報告であり、供養の一部でもあるのだと思います。
相続税申告は、早ければ早いほどよいわけではない
ただ、申告は、早ければ早いほどよいものでもありません。
資料を集め、財産を調べ、評価し、分割や特例について考える。
必要な確認には、必要な時間があります。
ご家族にとって大切な節目があるなら、その思いは大切にしたい。
けれど、そのために本来必要な調査や検討まで急いでしまっては、よい申告にはなりません。
反対に、10か月あるからといって、期限ぎりぎりまで先送りすればよいわけでもありません。
十か月という時間を設計する
相続税の申告を税理士に任せるとは、期限内に申告書を提出してもらう、というだけのことではないのだと思います。
いつ資料を集めるのか。
いつ財産の全体像を確かめるのか。
いつご家族に状況をお伝えし、いつ話し合っていただくのか。
そして、どの時点で申告を完成させるのか。
期限から逆算しながら、調べる時間を確保し、話し合う時間をご家族に残し、急ぎすぎず、遅すぎず、その相続にとってよい速さで10か月を組み立てていく。
法の時計、儀礼の時計、心の時計。
いくつもの時計が重なって動いていることを見ながら、時間そのものを設計していく。
それも、税理士の大切な仕事だと私は考えています。
法の時計を、専門家に預ける
専門家は法の時計をただ見張るのではなく、ご遺族から預かるのだと思います。
そうすることで、相続人の方には、四十九日を迎える時間があり、ご家族と話す時間があり、少し立ち止まる時間も残ります。
儀礼の時計と、心の時計を生きる時間が、あなたに残りますように。
