遺言書は絶対に書くべきなのか?

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最近、遺言書がなにかと話題です。

遺言書がないと大変なことになると言われ、ちょっと焦っています。

でも、本当に遺言書って、絶対に書かなきゃいけないものなの?

一昔前まで遺言書を残すのは資産家や特殊な事情のある人に限られ、一般の人にとって決して身近なものではありませんでした。

ところが、ここ最近、状況が様変わりしつつあります。

まず国が法律改正や遺言保管制度の新設までして遺言書の普及に取り組んでいますし、高齢化社会での商機をにらんだ民間事業者も続々と遺言市場に参入しています。

私が聞いているラジオでも、有名な俳優さんが遺言書を書こうと呼びかけるCMを最近よく耳にします。

少し前までタブーに近い扱いだった遺言書という存在をなんとか日常に浸透させようとしている様はなかなか興味深くもあります。

国を挙げての「遺言書を書こうキャンペーン」が絶賛進行中、というわけですね。

かくいう当事務所も遺言ビジネスに取り組む事業者なわけで、遺言書キャンペーンはありがたい追い風のはずなのですが…。

それでも何だか怖いなと感じてしまうのは、「遺言書を書かなくては大変なことになる」という脅迫めいたメッセージがキャンペーンの中に暗に含まれてなくもないからです。

恐怖や不安をあおって遺言書を書いてもらう手法、と呼んでは語弊があるでしょうか。

そうでもしないと遺言書なんて誰も書かないよ、という意見もあるかもしれません。

でも、実際のところ、

遺言書は誰もが絶対に書かなければいけないものではありません。

自分には必要だと思った人だけが書けばいいのです。

それを脅迫的に書くように仕向けるのは私個人としては大いに違和感があります。

重要なことだからこそ、遺言書を書くかどうか、世間の風潮に流されず、自分の考えをしっかり持って判断してほしい。

そうでなければ、本当にその人のためになる遺言書なんて書けないんじゃないか。

今回はそんな思いを記事にしてみました。

遺言書を書くとなぜいいのか?

遺言書を書くことが一般的におすすめできる行為であることは本当です。

おすすめの理由は、遺言書があると相続トラブルのリスクを引き下げることができるからです。

リスクをゼロにはできないものの、ないよりは絶対いい。

もちろん、きちんと作られた適切な遺言書である必要がありますが・・・。

もう少し詳しく説明します。

遺言書があると、遺産分割協議という家族での話し合いを回避することができます。

この遺産分割協議というのが曲者なのです。

「うちの家族は仲が良いから、遺産分割で揉めることはないだろう」と考えるのは、あまりに甘いと言わざるを得ません。

自分の家族を買いかぶっているか、遺産争いの歴史に学ぶ謙虚さが欠けているのだと思います。

…と書くと言葉がキツいのですが、色々なご家庭の事例を見てきた経験から心からそう思うので許してください。

たとえそれまで仲の良かった家族だとしても、遺産分割協議は家族の関係性が危険にされられる最大の難所です。

理由として、次のようなことが挙げられるでしょう。

  • 皆が公平に分けたいと思っていても、その公平の概念は各人で異なる主観的なものだから
  • あなたがいなくなることで、これまでの家族の関係性やパワーバランスに変化が生じるから
  • 家族で冷静に話し合うには高度な話し合いの技術が必要で、大半の人はその技術を身に付けていないから

そのため、相続トラブルを避けるには、遺産分割協議自体をしないのが一番なのです。

遺言書がなければ、遺産分割協議が必要です。

遺言書があれば、遺産分割協議は必要ありません。遺言書に書かれた通りに財産を分ければいいのです。

遺産分割協議を回避するために、遺言書を書くということですね。

遺言書があっても遺産分割協議をする場合があります。
相続人全員が同意すれば、遺言書通りではなく、遺産分割協議で財産を分けることは可能です。
ただし、この場合であっても、遺言書があれば、それがたたき台となることで、話し合いで揉めるリスクは格段に低くなります。

もちろん、相続トラブルが起こる可能性(相続リスク)には度合いがあります。

相続リスクが非常に高い人もいれば、相続リスクがほとんどない人もいます。

相続リスクが低ければ、遺言書は不要と考えるかもしれません。

ただ、そのリスクを遺言者が正しく評価するのはとても難しいことです。相続トラブルの事例をたくさん知っている専門家ならともかく、普通は無理でしょう。

また、たとえリスクが低くても、絶対に避けたいリスクであれば対策を取るべきともいえます。

ここまでの話をまとめると、

相続リスクを引き下げたいなら、遺言書は絶対に書いたほうがいい

との結論になります。

遺言書を書く必要がない人とは?

逆説的にこういうこともいえます。

自分の相続で家族がトラブルに巻き込まれても構わないという人は遺言書を書く必要がありません。

自分の家族がこう考えているとイヤですが(笑)、個人的な価値判断の問題ですので、それ自体が悪いというわけではありません。

そういう人間観や死生観もあるだろうなと思いますし、これまでの家族関係からそのように考える人もいるかもしれません。

周りに押されて無理に遺言書を書く必要はないといえましょう。

「自分はそうは思いません。家族に迷惑をかけたくありません」というのであれば、自分の中に遺言書を書く動機を持っているということです。

それを大切にして、ぜひ遺言書を書きあげていただきたいと思います。

今回の話は、推定相続人が複数いる場合に限ったものです。
相続人が一人であれば、遺言書がなくても遺産分割協議は不要ですので、問題が生じません。
また推定相続人が誰もいない場合も、当てはまりません。
これらの場合は、自分の希望通りに財産を受け渡すために遺言書を書くというのがテーマになってきます。これについては別の機会に記事にしてみたいと思います。
残念なことですが、いやいや遺言書を書く(書かされる)人というのはめずらしくありません。
遺言書を書くときは、ぜひ自らの内発的なモチベーションを大切にしてください。
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