ひきこもりのサバイバルプラン

畠中雅子著『高齢化するひきこもりのサバイバルライフプラン-親亡き後も生きのびるために』(近代セールス社、2012年)を読みました。

8050問題(ハチマルゴーマルもんだい)と呼ばれる高齢化するひきこもりとその家族が抱える問題については個人的に興味を持っていて畠中さんが書かれた記事にも目を通していましたが、まとまった形で読むのはこれが初めてです。本書の提唱する「サバイバルプラン」を一人でも多くの悩める当事者に知っていただきたい。少し古い本になりますが、ご紹介します。

ひきこもりのサバイバルプランとは文字通り、ひきこもりが生きのびるための計画のこと。ひきこもりがひきこもりのままでなんとか生きのびること働くことをあきらめた上で親の持つ資産や自分の年金を活用して生涯の生活を成り立たせるための計画です。「これからも働けない(働かない)」ことを前提としたサバイバルプランは、就労が最終的な解決策と信じる親御さんにとって受け入れがたいものかもしれません。しかし、「働けない」という現実と「これからもずっと働けないかもしれない」という予測を、まずは覚悟を持って受け止める。そして、現状を認識し、働かなくても平均余命くらいまでの生活が成り立つようなプランを一生懸命考えること。すると、自分が死ぬと子供の生活が成り立たないと考えていたのは思い込みに過ぎず、金銭面では親亡き後も子供が食べていけるプランが成り立つケースは多いのだそうです。それによってご家庭は少し安心感を得られると畠中さんは言います。

本書には畠中さんのと精神科医の斎藤環さんの対話も収められています。斎藤さんは、サバイバルプランの前提である就労を断念するという点について、正確には断念というよりも「たとえ就労できなかったとしてもその時はその時」という割り切りだとして、とりあえず生き延びることを考える、働かなくても食べてはいけることが現実的なプランで保証されていれば、あきらめないでいられると述べています。

この「生きのびる」という目標は、子供の幸せや活躍を願う親御さんから見ると、物足りないと思われるかもしれません。しかし、本書でも触れられているように、ひきこもりの帰結として将来的な衰弱死や孤独死、自殺が懸念されていることも確かです。8050問題が生きるか死ぬかの問題に行きつくのだとすれば、「まずは生き延びることが大切」という本書のメッセージは真剣に受け止めなければなりません。

斎藤さんはあきらめないことの大切さを強調し、「何歳以上は絶望ということはありません。あきらめないでいただきたい」とコメントしています。絶望せず生きてさえいれば、状況は変わるかもしれません。本書が出版された2012年以降をみても、社会は変化しています。2019年現在、人手不足を反映してかひきこもりの就労支援が活発になっていますし、ITを活用した在宅ワークも普通になってきました。働くことに対する社会的な意味づけも徐々に変化しつつあるように思います。ひきこもりがひきこもりのままであっても、周りの状況の変化により事態が好転する可能性は大いにあるのです。この国には年齢によって可能性が閉ざされていくかのような主張があふれかえっていますが、それにうかうかと乗ることなく、あきらめないで生き延びてほしい。

生き延びるためには周到に練られた実行可能な計画が必要です。サバイバルプランの作成には年金、保険や住まいなど多岐にわたる知識が求められます。本人が無理なら親御さんが頑張って知識を身に付けるよりほかありません。その際に専門家の手を借りるのもいいでしょう。相談先には、プラン全体の設計にはファイナンシャルプランナー、プランの各要素には社会保険労務士や行政書士など各分野の専門家が考えられます。8050問題は人知れず家族だけで悩んでいるケースがたくさんあります。信用できる外部の第三者に相談することが解決の糸口となるかもしれません。当事務所でも対応できる部分がありますので、お困りの方はぜひ一度ご相談ください。